インスタントコーヒー「ネスカフェ」を展開するネスレ(タイ)が、サムットプラカン県のアラヤ工業団地に新工場を建設すると発表した。投資額は300億バーツで、2028年に第1フェーズの稼働を始める予定だ。粉末コーヒーや缶コーヒー、3イン1タイプまで一貫して生産できる拠点とし、雇用は約500人を見込む。生産ラインだけでなく物流センターも併設する計画だ。
背景には、コーヒー豆の委託加工先「クオリティ・コーヒー・プロダクツ(QCP)」の共同株主マハキットシリ家との係争がある。両者の間では少なくとも6件の訴訟が進行中で、うち損害賠償1000億バーツを求める裁判は今年12月21日に判決が言い渡される見通しだ。もう1件は220億バーツ近い賠償請求で、証人尋問が11月まで続く。ネスレ側も、一時的に生産や販売を差し止められたことによる損失として、約6億バーツの反訴を起こしている。
ネスレは、流通手数料などの計算は1993年に締結した契約に基づき、国際会計基準にのっとって毎年監査を受けており、契約違反はないと主張。現在は国内8カ所の他工場やOEM委託生産、輸入で不足分を補っている状態で、新工場が稼働すればほぼ全ての製品ラインを自社で賄えるようになる。安定供給という点では、取引先にとっても心強い材料だ。
アラヤ工業団地は近年、第2期の拡張工事が進み、新たな投資を呼び込んでいる地域の1つ。タイは世界有数のロブスタ種コーヒー豆の産地でもあり、ネスレは国内生産量の半分を買い付けている。係争の行方によっては、生産委託の枠組みそのものが見直される可能性もある。

