タイ商務省 外資規制9業種を撤廃 事業参入の簡素化で投資誘致を加速

タイ商務省事業開発局(DBD)は2026年5月、1999年施行の外国人事業法(Foreign Business Act、以下FBA)附属リストから9業種を除外する案を閣議に提出し、承認を得た。これはプンポン事業開発局長が発表したもので、9業種を「専門監督機関が既に存在する業種」「グループ内サービスに限定される業種」「その他」の3グループに分類したうえで段階的に手続きを簡素化する内容だ。
FBAでは外資比率50%以上の企業を「外国企業」と定義し、同法附属リストに列挙された業種への参入には商務省への許可申請を義務付けてきた。附属リストは規制の厳しい順に第1種から第3種まで設けられており、今回削除の対象となるのはいずれも第3種(タイ人が十分な競争力を持つには至っていないと見なされてきたサービス業種)に分類されているものだ。
今回提案された措置であるが、「外資の自由化ではなく規制の重複排除が目的」とDBDは強調する。対象業種の外国人投資家は、引き続き業種別の監督機関への許可申請が必要。例えば、通信事業は国家放送通信委員会(NBTC)、資金管理センターや資産を担保とする金融サービスはタイ中央銀行(BOT)、証券・先物取引関連は証券取引委員会(SEC)、石油掘削はエネルギー省がそれぞれの窓口となる。今回変更されるのは、商務省への二重申請が不要になる点であり、許認可プロセスが実質的に一元化される。
グループ内業務、資源開発など対象に
9業種の内訳を詳しく見ると、第1グループ(専門監督機関が既に存在する業種)には、「1種類の通信サービスライセンスに限定した電気通信サービス」、「資金管理センター業務、有価証券・先物を担保とする貸付」、」先物取引の代理・助言・資金管理サービス(2003年先物取引法適用外のもの)」、「農産物の先物取引センターでの現物受け渡し売買」の計5業種が含まれる。
第2グループ(グループ内専用サービス)は、「同一企業グループ内向けの業務管理・人事・情報技術サービス」と「国内グループ会社向けの債務保証サービス」の2業種。
そして第3グループ(その他)は、「金融機器・自動販売機設置のための敷地部分貸付(主に自社従業員向け)」と「石油掘削サービス(石油採掘権者向け専用)」の2業種だ。法令上の手続きについては、8業種を省令案として提出し、農産物の先物取引センター関連の1業種のみ勅令案とする形を取る。
FBA改正の流れと外資誘致戦略
今回の閣議決定は、一連のFBA近代化の流れによるものだ。FBAは施行以来、グループ会社間での一定のサービス提供を規制対象外とした「2019年省令改正」など小幅な見直しは重ねてきたが、規制対象業種を実質的に開放する抜本改正はほぼ行われてこなかった。こうした状況を踏まえ、タイ政府は2025年4月の閣議でFBAの大枠改正を原則承認しており、今回の9業種除外はその具体的な第一歩に当たる。
DBDは今年4月30日に締め切ったパブリックコメントの結果も踏まえ、今回の省令・勅令案を確定させた。今後の手続きとしては、国務院による法律審査、閣議での最終承認、官報への掲載という3段階が残っており、実際に法的効力を持つまでには今後、数週間から数カ月を要する見通しだ。
一方、今回の措置はタイにとって切迫した課題への対応という側面もある。米国の追加関税措置を契機としたサプライチェーン再編が加速する中、タイはベトナムやインドネシアとの外国直接投資(FDI)獲得競争にさらされている。タイ投資委員会(BOI)が2026年第1四半期に受け付けた投資申請額は1兆バーツを超え、前年同期比2.4倍に増加。デジタル・電子産業を中心に大型案件が増えるなか、規制環境の整備がいっそう重要性を増している。
今後、対象9業種については、許認可の申請先が業種別の専門監督機関に一本化され、商務省DBDへの外国人事業許可申請が不要になるため、許認可取得にかかる時間と費用の削減が見込まれる。しかし、業種別規制それ自体は引き続き適用されるため、実務上の手続きへの影響は業種ごとに精査が必要だ。官報への掲載前に法的拘束力は生じないことから、進捗状況を継続して確認することが求められる。
省令・行政規則7000件超の撤廃 規制改革さらなる推進
FBA改正と並行し、タイ政府は5月18日、省令・政令レベルの事業関連規制7000件超を大幅に撤廃・簡素化する方針も表明した。長年にわたり企業活動の重荷となってきた二次法令・行政規則を抜本的に見直すことで、グローバルなサプライチェーン再編を進める多国籍企業に対し、競争力の高い投資先としてタイを位置付けることが狙いだ。
タイはこれまで膨大な数の法律・副次規制を抱え、外資企業が事業許可を取得するには複数の省庁間をたらい回しにされるケースが多く、業界団体から長年改善が求められてきた。タイ工業連盟(FTI)の調査では、許認可申請の際に賄賂要求に直面した企業の割合が6割を超えており、規制の複雑さと汚職が表裏一体の問題として企業の投資意欲を削いできた経緯がある。
FBAの9業種除外と合わせ、省令・行政規則の大規模撤廃を同時並行で進めることで、タイは投資環境の抜本改善を対外的に示す狙いがある。タイ進出を検討中または拡張を計画中の日系企業にとっても、許認可手続きや事業コストの削減に直結するこれら一連の改革の動向は、引き続き注視が必要だ。
