【経済】タイの消費者物価指数が6カ月連続マイナス 燃料費引き下げ措置が影響

タイの物価上昇率がゼロ近辺まで低下している。商務省の発表によれば、2025年9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で0.72%下落し、6カ月連続のマイナスとなった。
今回の下落は主に燃料費や電気料金の引き下げによるもので、政府が生活費軽減策として導入した値下げ措置が影響した。また、生鮮食品の価格も前年より下がり、卵、野菜、果物などが物価全体を押し下げた。
一方で、価格変動の大きいエネルギーや生鮮食品を除いたコアCPIは前年同月比0.65%増となった。商務省貿易政策戦略局のナタポン局長は「物価は依然として上昇基調であり、国内の購買需要は根強い」と強調した。
商務省はデフレ懸念否定
「デフレは複数の要素を伴う現象だ。雇用が通常水準にあることや、調理済み食品や娯楽分野の価格が底堅いことを踏まえると、現時点でデフレとは言えない」と同局長は述べ、過度な懸念を否定した。
今後について商務省は、2025年第4四半期の物価上昇率は「ゼロ近辺」で推移すると見込む。月によってはマイナスとなる可能性もあるが、世界的に原油価格が前年より低水準にあり、さらに政府が燃料調整費(Ft)を12月まで引き下げていることがその背景にある。
インフレ率見通しを下方修正
タイの物価低下はASEAN諸国と比べても際立つ。8月のデータでは、タイのインフレ率はマイナス0.79%と、140カ国中で9番目に低く、ASEAN諸国では最低値だった。
加えて、バーツ高による輸入コスト低下も物価安定に寄与している。政府は「人々の生活コストを下げる」との方針のもと、半額補助制度「コン・ラ・クルン」などの消費刺激策を継続しており、短期的には消費者信頼感を下支えする見通しだ。
商務省は2025年通年のインフレ率見通しを従来の0.0~1.0%から0.0%に下方修正した。物価動向は依然注視が必要だが、現時点ではデフレ入りの兆候は限定的とされる。
