「日本とタイの会計システムの違い」Q&A(前編)
2025
5/18
「日タイ会計システムの違い」 を担当実務者向けにまとめました。両国の制度の違いから生じるトラブルを事前に解消するための「転ばぬ先の杖」としてご活用ください。
会計基準に違いはありますか?
会計処理の根拠となる基準が以下の通り異なります。
多くの中小企業(一部の大企業)や非上場企業では「日本基準(J-GAAP)」、上場企業では「IFRS」や「日本基準」などが用いられます。日本基準は法人税法と密接に連動しており、「税効果会計」による「繰延税金資産の計上」など独自性があります。
タイは「TFRS(Thai Financial Reporting Standards)」を用いており、これは国際財務報告基準(IFRS)に準拠 しています。日本に比べて会計と税務が明確に分離されている ため、例えば減価償却や引当金の計上で税務上の調整が必要になることがあります。
会計帳簿の使用言語と通貨の違いは?
大きな違いは、帳簿の言語・通貨の法的義務の有無 です。
原則として日本語・日本円を使用しますが、外貨取引やグローバル企業では補助帳簿に英語・米ドルなどを併用することも可能です。電子帳簿保存法に基づけば、デジタル媒体による保存も認められます。
タイでは帳簿の作成・保存をタイ語・タイバーツで行うことが法律で義務付けられています。例外として英語併記は許容されますが、正式な帳簿として認められるにはタイ語版が必要です。外資系企業が英語帳簿で対応していても、税務調査時に翻訳提出を求められるため、タイ語での記帳対応が実務上必須となります。
決算期の設定に違いはありますか?
両国とも会計年度は任意に設定可能ですが、手続きの厳格さが異なります。
自由に決算期を設定でき、設立登記後に変更も可能です。法人税の申告期限は決算日から2カ月以内であり、税務署への届出だけで完了します。
決算期は最初に定款で定めた上で、商務省に登録します。変更する場合は株主総会決議と変更登記が必要。さらに、会計年度終了後150日以内に法人税の申告(PND50)、1カ月以内に財務諸表を商務省へ提出しなければならず、決算後の流れが厳格に定められています。
決算時の外部監査の義務は?
タイでは企業規模に関係なく、外部監査が義務です。
上場企業や「資本金5億円以上または負債200億円以上の会社」は会計監査人設置義務がありますが、中小企業は監査義務がありません 。一部は任意監査で対応しています。
すべての法人に毎年の外部監査義務 があります。監査はタイ公認会計士(CPA)の資格を持つ者でなければ行えず、監査報告書の提出が必須です。たとえ活動実態がない休眠会社でも監査が必要 という点が、日本との大きな違いです。
会計士の資格制度に違いはありますか?
両国とも国家資格制ですが、資格体系が異なります。
公認会計士(CPA)と税理士があり、前者は監査、後者は税務を中心とする独立資格です。両方の登録が必要なケースもあります。
タイでは「CPA(Certified Public Accountant)」の資格が監査を行う唯一の国家資格です。さらに日常記帳業務はCPD(継続的専門能力開発/Continuing Professional Development)研修を継続して受講している会計記録責任者を任命しなければなりません。つまり、記帳と監査で必要な資格者が異なる点に注意が必要です。
法人税の課税制度に違いはありますか?
法人税制度の構造と税率に違いがあります。
実効税率は約30%(法人税・法人住民税・事業税を合算)。所得控除・損金算入・減価償却などのルールは詳細であり、税務と会計の整合が求められます。
法人税率は一律20% (一部の中小企業は15%~20%の軽減税率適用)。税務と会計の乖離が大きく、タイ会計での損益と税務所得には調整が必要 です。
月次での税務申告が必要な項目に違いはありますか?
はい、タイでは税務申告の頻度が高く、月次での義務が複数存在 します。このため、タイでは毎月の記帳・税務申告体制を構築しないと罰則リスクが高く なります。
源泉所得税の納付は原則として翌月10日までですが、年2回の納付特例制度(年2回納付)があるため、小規模事業者の事務負担は比較的軽めです。また、法人税・消費税の申告も四半期または年次ベースで済む場合がほとんどです。
タイでは以下の項目について、毎月申告・納付が義務付けられています 。 源泉徴収税(PND 1, 3, 53、54、PP36など):給与、外注費、利息、家賃などの支払い時に発生。翌月7日(e-Filingは15日)までに納付 。VAT(PP30):課税売上高が年間180万バーツを超える企業もしくは売上高のない企業はVAT登録が必須。 毎月15日までに申告・納付 。 社会保険料:給与支払い後、翌月15日までに申告・納付 。電子申告が推奨されており、その場合は期限が7日延長されます。
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