【貿易】タイ果実輸出が欧州・中東で人気 輸送最適化で返品率低下
香港開催の見本市「Asia Fruit Logistica 2025」で、タイの輸出業者が欧州・中東などの仕向け先の業者と商談を行った。今年は「ラムヤイ(竜眼)」が英国やオランダで、独特な香や食感、保存性の高さ、季節性の利点が評価され、人気を高めている。また、「ドリアン」が中国やASEANでの根強い需要が続いているほか、加工品や即食・即飲型商品の開発も進んでいる。糯米(もちごめ)との組み合わせや、冷蔵・定温輸送の最適化により、品質の標準化と返品率の低下も実現した。
タイ政府は果実の高度加工とコールドチェーンの拡充を後押しする。原料の産地分散や収穫タイミングの標準化、産地と港湾をつなぐ複合輸送の整備で、価格の乱高下を抑える狙いだ。主要産地では欧州の残留農薬基準への対応を急ぎ、QRコードで生産履歴を示す取引も広がってきた。
一方で、欧州の景気減速や物流費の変動、為替の振れにより収益は圧迫されやすい。そのため、輸出先の多角化、通関書類電子化、コンテナの温度・位置のリアルタイム監視など、コスト・品質管理の両面での最適化が要る必須となる。加工度を高めるほど付加価値は増すが、原料の規格化や規制対応に初期費用がかかるため、中小事業者には連携の枠組みが欠かせない。
輸出を持続させるには品質管理の標準化が欠かせない。EUの規制は年々厳しくなっており、残留農薬、トレーサビリティ、植物検疫の三点を必須事項となる。タイ側は農業生産工程管理(GAP)認証の取得や洗浄・選果設備の刷新、箱詰め工程の標準化に取り組んでいる。物流面では定温区画の確保と港湾での積み替え時間の短縮が鍵となり、収穫から消費者までの「時間」を短くする工夫が必要だ。日本市場ではドリアンの冷凍カット、マンゴーの糖度保証など、値ごろ感と品質保証を両立できる形が好まれやすい。為替の振れにはヘッジや複数通貨建てでの契約が有効で、販社と生産者とのリスク共有も論点となる。
一方、日本企業は冷鎖資材や鮮度保持剤、果実加工機の供給で参入余地がありそうだ。また、現地パートナーとのコラボとリスク管理が鍵となる。契約面では為替・物流・規制変更の各条項を明確にし、品質・期限・温度などのサービス・レベル・アグリーメント(SLA)を数値化する。人材面ではタイ語・英語のバイリンガルを軸に現場主導の運営を行い、異常時の意思決定を早める。データは可能な限りリアルタイムで可視化し、本社と現地の重要業績評価指標(KPI)を一致させる。資金繰りは現地通貨の借入れやサプライヤー金融の導入で標準化し、税務は移転価格と恒久的施設(PE)リスクの点検を継続することが必要となる。
規制・ガバナンス面では、個人情報・労働安全・環境の順守が不可欠だ。個人情報は収集目的の明確化と保存期間の設定、第三者提供の管理が必須。労働では勤務時間と安全教育の記録、外注先の監査、ハラスメント防止の相談窓口を整備する。環境面ついては二酸化炭素(CO2)・水・廃棄物のデータ収集と削減計画が取引先から求められ、サプライチェーン全体のESG(環境・社会・ガバナンス)評価が商談の前提になりつつある。緊急時の事業継続計画(BCP)は洪水・停電・通信断に対応できるよう、代替拠点と連絡網を定期的に訓練する必要がある。
