【投資】中国企業のEEC投資が加速 鉄道・EV・航空物流強化計画進む
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タイ東部経済回廊(EEC)で、中国企業の投資が勢いを増している。2019~2024年にかけて、中国勢が承認を受けた投資は84億米ドル規模となり、EEC全投資の16%を占めた。最多はタイ国内からの37%であるが、海外勢で中国に次ぐのが日本で12%となっている。
案件の柱はEVとエネルギーで、BYDなどの大手が製造と周辺サプライ網を拡大。インフラでは、全長約220キロの高速鉄道計画がコロナ禍で停止した分を取り戻し、完了まであと5年の見通しとされる。
供給網の再編と現地化
中国勢の投資のねらいは、米関税の引き上げなど外部リスクをさける供給網の二重化にある。労務コストと地の利を活かし、ASEAN域内と対外輸出の二面展開を狙う構図である。当局は、新技術の持ち込みや地元への利益が明確な案件を優先的に認める方針を示す。中国の鄭州空港経済区とは「アエロトロポリス」設計で覚書が交わされ、航空物流と人の流れをEECに結びつける構想が進む。これにより、タイ製EV部材の空輸や、試作・少量多品種の動線が太くなる効果が期待できる。
民間の受け皿として、倉庫・コールドチェーン・工業団地の増強が続く。下請け土木の参入や、周辺の不動産開発も動き出す見通しだが、その一方で、技能人材の確保や電力の安定供給、環境対応など課題は多い。EECは2017年の立ち上げから先端産業の集積を掲げてきたが、次の段階は現地化が勝負となる。日本企業にとっては、部材・装置・保守の商機が広がる半面、調達の再編で価格競争は厳しくなる。中長期の視野で技術・品質・サービスの三位一体を組み直すことが、EECでの持続的な収益に直結する。
