【経済】バーツ高対策で政府と中銀が協調へ 短期資金監視と金取引点検
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タイ政府は、バーツ高が続くなかで中央銀行と歩調を合わせ、資本流入と金取引の動きをきめ細かく監視し、相場の過度な変化を抑える方針を示した。エクニティ新財務相は、中銀新総裁と安定化の枠組みを話し合ったと報告。異常な資金流入や金関連の取り引きに不自然な点がないかを所管機関と連携して点検すると述べた。発言後、為替は一旦やや戻し、1ドル=31.88バーツ前後まで弱含んだが、年初来では約8%のバーツ高であり、域内では台湾ドルに次ぐ強さである。
輸出と観光にとって、足元の通貨高は採算を圧迫する。価格を上げれば数量が落ち、据え置けば利益がやせる。このため、為替のぶれに合わせて小刻みに調整する動きが広がる見込みだ。
また、調達側では、輸入原材料の支払通貨を見直し、売上通貨との自然ヘッジの比率を高めるなどの工夫がいる。
バーツ高の背景には債券・株式への海外からの資金流入がある。米国の利下げや金利差の縮小がリスク選好を押し上げる一方、金相場の変動も資金の往来をはやめる。1~7月の金輸出は前年比82%増とされ、カンボジア向けが21億米ドルと突出した。首相はこの急増の実態把握を指示し、中銀は金関連の取り引きに関する措置の検討を明らかにしている。狙いは、犯罪資金や裁定取引に絡む偏ったフローを防ぎ、実需を傷めない範囲で過度のバーツ高を抑えることである。
中銀の新体制は10月1日に正式発足である。政府と中銀の協調が、実需を崩さずにボラティリティをならす方向に働くか、今後の運用が問われる局面である。
