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【物流】タイ・カンボジア国境貿易停滞 民間は安全確保を最優先要求

タイとカンボジアの国境紛争が長期化し、国境検問所の閉鎖による経済的損失が拡大している。タイ・カンボジアビジネス評議会のボラタット会長によれば、損失は1日当たり5億バーツに達し、9月末まで閉鎖が続けば累計400億バーツ、半年で1千億バーツ規模に達する恐れがある。

タイ商工会議所大学の推計では、タイの対カンボジア輸出額は年3600億バーツに上り、その半分が国境貿易に依存する。民間団体は被害額の全容を把握するため、国境県の商工会議所からのデータ収集を進めているところだ。

民間の要求と政府対応

民間側は「安全が確保されないまま検問所を再開すれば状況は悪化する」と警告し、部隊撤収や詐欺対策など国境委員会で合意した措置を優先すべきと主張する。まずは紛争の少ないチャンタブリーやトラート県から段階的に再開し、工業製品や消費財の輸送を限定的に認める案が検討されている。

一方、紛争の影響でカンボジア向け輸出が停止した企業も出ている。家庭用品メーカーのタイ・ステンレススチール社は、例年数千万バーツ規模の輸出が途絶えたと明かす。

商務省外国貿易局のアラダー局長は、国境貿易の伸び率は当初3%を目標としていたが、今年は2%にとどまる見通しと説明。カンボジア税関は7月16日以降、石油・ガス・野菜・果物の4品目の輸入を禁止しており、他の製品も物流や反タイ感情の高まりで影響を受けている。

代替ルートと支援策

一部の乳製品ブランドは、シアヌークビル港を経由した海上輸送や、ラオス・ベトナム経由の陸路輸送に切り替えた。運賃は安定しているが、SNSを中心にカンボジア国内でタイ製品ボイコットの動きも見られる。

これに対しタイ商務省は、貿易展示会や即売市への出展支援、農産物の新規販路開拓を進めている。また、中小企業向けには政府系金融機関と連携し、ソフトローンによる資金支援を提供中である。

国境紛争が長引けば、タイ製品の市場シェアが競合国に奪われる可能性が高まる。民間は「迅速な安全確保と段階的な再開こそが不可欠」と強調する。

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