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【商業】セントラルリテール、伊リナシェンテ売却で財務基盤強化 域内成長に軸足

タイ最大の小売グループ「セントラルグループ」の中核企業であるセントラルリテール(CRC)の取締役会は、イタリアの高級百貨店リナシェンテを親会社であるセントラルグループに売却することを正式に承認した。取引額は約147億バーツ。売却益は税引き後で約60億バーツに達すると見込まれている。

今回の売却決定は、タイとベトナムという成長市場に経営資源を集中する戦略の一環。欧州市場は投資負担が大きく、さらなる資本投入は主力市場から資金を分散させると判断された。CFOのパネット・マハンカヌラク氏は「東南アジアでのM&Aや新規投資に資金を振り向ける」と述べ、地域戦略を明確にした。

売却資金は財務体質の改善に充当される予定で、53億バーツの債務返済を進めるほか、77億バーツ(1株当たり1.28バーツ)の特別配当を株主に還元する計画。これは株主にとって大きな利益還元策となり、企業価値向上につながるとの見方が強い。

欧州資産の高値売却

リナシェンテの売却価格は2018年の取得時を大きく上回り、資産価値や収益性の指標は欧州他社を上回る水準に評価された。市場関係者は「非戦略資産を高値で手放す好機」と分析する。売却の公正性については独立系アドバイザーが意見書を作成し、11月6日に予定される株主総会で承認を得る見通しだ。

タイ証券取引所の報告によれば、2025年上半期の小売業全体の売上高は前年同期比で6%増加した一方、欧州市場は成長鈍化が目立っている。今回の動きはタイ企業がリスクの高い海外資産を整理し、域内成長に軸足を移す象徴と受け止められている。

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