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【経済】バーツ高が観光と輸出直撃 タイ経済団体が中銀に適正レンジへの是正要求

タイ工業連盟(FTI)は、足元のバーツ高が観光と企業収益に広く悪影響を与え、景気の回復を鈍らせていると警鐘を鳴らした。同連盟のクリアンクライ会長は、外国人旅行者の支出が目減りし、ホテルや外食など観光関連の売上が細ると指摘。今年の訪タイ者数は当初目標の4000万人に届かない恐れがあるという。加えて投資計画、とりわけ新規ホテル計画の延期リスクが高まるとした。

タイ中銀によれば9月19日時点の加重平均インターバンク為替は1米ドル=31.8バーツ。FTIは、年初来でバーツが約8%上昇し東南アジアで最も強い通貨となったとして、中銀に通貨水準の見直しを求めた。望ましいレンジとして1米ドル=34~35バーツを挙げ、観光客の実質負担を抑えた上で、輸出企業の競争力低下を和らげる水準と指摘する。同会長は「タイ通貨は周辺国に比べ割高」と述べ、旅行業の業績悪化を懸念。実際、ベトナムは直行便の拡充やビザ緩和、文化・アドベンチャーなど多様な観光プロモーションを打ち出し、直近月の外国人入国者数は前年同月比21%増の約1400万人に記録した。この差が積み上がれば、旅行者は割安な国・地域へと流れてしまう。輸出でも為替高は価格競争力を確実に削ぐ。とりわけ域内の通貨が弱含む中での単独の通貨高は、受注価格の硬直性と相まって数量・利益率の双方を圧迫する。

為替の上振れは旅行消費の単価だけでなく、滞在日数や客単価の構成も変えてしまう。円安環境下では日本人旅行者の節約志向が強まり、欧米からの長距離客も費用対効果を以前より重視する。価格に敏感な層が他国へと流れるのに対し、価格耐性の高い層は高級セグメントへ集まる二極化が起きる。その一方で、価格以外の価値を高めれば顧客が費用負担を容認する可能性はある。そのためFTIは、観光収入と輸出の双方を守る観点から、為替のボラティリティ抑制と適正レンジ回帰を改めて要請した。

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