【デジタル】タイ知財局が音楽ライセンス新システム公開 違法徴収抑止と透明化を
商業省知的財産局(DIP)は、音楽ライセンスの確認と違法な徴収行為の抑止を目的とする2つのオンライン・システムを公開する。飲食、ホテル、カフェなどサービス業の負担を軽くし、正規の権利者へ適正な対価が届けるのが狙いだ。1つ目は、25万曲超のタイ楽曲と1900万曲超の海外楽曲情報を収載したデータベースである。事業者は曲名やアーティストで検索し、権利者や権利団体を確認できる。2つ目は、徴収の手続きやライセンスの透明性を高める管理基盤で証憑を簡単に確認・追跡できるようにする。これにより、権限のない団体や個人による架空請求、二重徴収、過大請求のリスクが下がる。DIPは、店舗運営側の法的リスク低減と、音楽産業の収益の回復を両立させたい考えだ。
実務面では、料金表や対象範囲、「利用態様」(権利の利用方法)の定義を明確に提示し、オンラインでの申請と確認を完結させる。利用者の入力負担を軽減するため、店舗規模やスピーカー設置、来客数などから目安料金を自動計算する案も挙がっている。
運用初期は周知が鍵となり、地方都市や観光地の店舗に対し、商工会や観光当局と連携した説明会を開く。DIPは、著作権の適正な流通がライブ、配信、BGMなど周辺市場を広げ、観光地の商業施設にも波及効果が出ると見る。
違法徴収が減れば、事業者と権利者の対立が和らぎ、継続的な文化投資につながる。制度定着には、通報窓口の整備と、AIによる音源認識の活用、決済ログとライセンスのひも付けといった仕組みづくりが重要だ。店舗側も、使用実績の簡易な記録と保管、レシートや証憑の保存を習慣化すれば、紛争コストを引き下げることができる。
今回の仕組みは、観光と小売の回復局面でBGM利用が増える実態に合わせたものでもある。透明なライセンス環境は海外チェーンの出店判断にもプラスとなり、統一ルールが外国人経営者の参入障壁を下げる。データベースの公開は音楽教育や地域イベントにも応用でき、創作者と地域のつながりを強める。
ただし、店舗の負担増や登録の手間を避けるため、ワンストップ申請と多言語対応が不可欠。運用当初は誤請求や不慣れが起きやすいため、料金還付と苦情処理の迅速化も制度信頼に直結する。長期的には、再生回数や実演時間に基づく細かなレベニュー配分、動的料金の検討も視野に入れる。著作権の順守は国際指標でも注目度が高く、透明な運用は投資環境の評価にもつながる。DIPは、業界団体・観光当局・内務省と連携し、観光地の繁華街や空港周辺でのモデル地区を設定し、早期定着を図る方針だ。
