【不動産】タイ不動産市場が深刻停滞 長期低迷で市場規模縮小へ
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タイ不動産市場は深刻な停滞局面にあり、2026年まで回復が見込めないとの見方が広がっている。9月30日にバンコクで開かれた「タイ不動産市場展望2026」フォーラムでは、業界関係者が相次いで厳しい現状を指摘した。
SCB経済情報センターのソンプラセット主席アナリストは、不動産市場を圧迫する要因として「国内経済の減速」「海外投資減退」「金融機関の融資抑制」「新規物件価格の高騰」の4点を挙げた。特にローン拒否や生活費高騰により月収5万バーツ未満の世帯(市場の約7割)の購買力が著しく低下していることが住宅市場を停滞させているという。また外国人購入者のうち、中国人比率は従来の6割から3割に急減している。
景気減速が直撃する住宅需要
不動産取引額は前年比10〜20%の減少が見込まれ、住宅市場規模は大きく縮小する見通しであり、その下げ幅は1997年のアジア通貨危機以来の数字になると見込まれている。新規供給はここ20年で最低の水準に落ち込んでおり、バンコクの新築コンドミニアム供給も過去15年で最低となった。
タイ不動産協会のイサラ会長は「住宅投資は波及効果が大きく、建設資材や家電、家具など幅広い産業を刺激する。GDPの5〜6%を占める不動産業の停滞は景気全体に影響する」と警鐘を鳴らす。
その一方で、500万バーツ以下の住宅市場にはまだ潜在需要があるようだ。リース購入やリースバックといった新たな金融商品が広がれば、需要喚起が期待できる。
タイ政府は景気刺激策として登記税や融資規制の緩和を検討しており、タイ中央銀行に対しては金利引下げの要請を強めている。国家経済社会開発評議会(NESDC)の統計によれば、2025年の家計債務比率はGDP比87.4%に達しており、構造的課題への対応が不可欠となる。
