【政治】タクシン元首相が服役中に英語指導へ 受刑者更生教育で社会貢献
刑務所を管轄するタイ法務省矯正局のプラウット局長は10月12日、タクシン・チナワット元首相(76)が服役中に他の受刑者へ英語を教える可能性があると明らかにした。同局長によれば、タクシン氏は健康上の理由から肉体労働には従事しない方針で、代わりに教育関連の更生プログラムに参加する見通しだ。
タクシン氏は汚職や職権乱用など複数の罪で有罪判決を受け、長期間の亡命生活を経て2023年に帰国。その後、警察病院での治療を経て服役が続いている。法務省関係者は「氏の豊富な国際経験を活かすことで、受刑者の社会復帰支援につながる」と述べ、教育活動への参加を積極的に検討していることを報告した。
タイ矯正局によると、刑務所内での教育プログラムは再犯防止を目的として導入されており、基礎教育のほか語学、コンピュータ技能、会計実務などが提供されている。2024年時点で全国に約26万人の受刑者が収容されており、そのうち約15%が教育プログラムを受講。特に外国語教育は、観光立国タイにおいて就労支援の重要分野とされている。
一方で、タクシン氏の扱いをめぐっては「特別待遇ではないか」との批判も根強い。刑務所内での役割や生活環境については厳格な管理下にあるものの、同氏の影響力を考慮して慎重に対応が進められている。これに対し矯正局は、「全ての受刑者に平等な教育機会を提供することが目的であり、特例ではない」と説明している。
政治評論家の間では、タクシン氏の教育活動が「社会的贖罪」として国民の印象を和らげる可能性があるとの見方も出ている。特に、若年層や低所得層への教育支援を訴えてきた同氏の姿勢が、今後の政治的影響に波及する可能性も指摘されている。
プラウット局長は「更生の場における教育こそ再出発の第一歩である」と強調し、タクシン氏を含む模範受刑者による授業実施を年内にも試行する意向を示した。
