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【車両】タイ政府、EV政策を輸出主導型に転換 生産要件を柔軟化し競争力強化へ

タイ政府は2025年7月30日、国内電気自動車(EV)産業の競争力を高めるため、既存のインセンティブ政策を改定し、生産要件を緩和すると発表した。国内販売が伸び悩む中で、輸出主導による生産拡大へと軸足を移す方針だ。

同政策は2022年に導入された「EV3.0」に端を発し、2024年からは後継となる「EV3.5」が施行されている。同政策では、一定期間に限り完成車(CBU)輸入の関税を最大40%減免し、物品税を2%に引き下げる一方、メーカーに対しては「輸入した台数と同数の車両を2024年までに国内生産」「2025年には輸入1台につき1.5台を生産」と義務付けた。今回の改定では、この生産義務の算入対象に輸出車両を含めることが認められた点が最大の変更点となる。具体的には1台輸出した場合、国内生産1.5台分のノルマに換算できることになった。

タイ投資委員会(BOI)のナリット事務局長は、「輸出を含めた柔軟な生産計画が可能となり、タイはASEANにおけるEV生産・輸出の中核拠点としての地位を確立できる」と強調した。これまでBYD(比亜迪)や長城汽車(GWM)を中心に中国勢から総額40億ドル超の投資が流入しており、タイ国内各地で生産が本格化している。タイ政府によれば、EV輸出台数は2025年に1万2500台、2026年には5万2000台に達する見通し。なお、タイは2025年4月に初のEV完成車輸出(660台)を実現している。

BOIは2024年に一度、生産義務の期限を延長しており、今回の輸出算入ルールは、需給バランスの乱れを避けつつ企業が柔軟に計画を立てられるようにする措置となる。この背景にあるのは国内市場の伸び悩みだ。2024年のEV販売台数は政府補助の縮小とローン審査の厳格化が影響し、前年を下回った。ただ、2025年上半期は前年同期比52.4%増と回復傾向を見せている。

タイ国内のEV販売では中国ブランドの攻勢が際立ち、2025年初時点で販売シェアの70%以上を中国勢が占有している。価格競争が激化するなか、トヨタやホンダなど日系メーカーはEV投入を加速させてはいるが、価格面では依然として劣勢に立たされている。

政府は2030年までに国内自動車生産の30%をEVとする「EV30@30」政策を掲げており、充電網や電池リサイクルなど関連インフラの整備を推進中。エネルギー政策計画局(EPPO)は2026年導入を予定する新電力開発計画(PDP)で、再生可能エネルギー比率の拡大と電力供給網の安定化を図る方針を示す。

タイ政府は「輸出強化と国内市場の健全な発展を両立させる」としており、今回の政策転換はその第一歩と位置づけられている。EV産業が持続的な成長軌道に乗るためには、電池コストの低減と地方都市での充電設備整備が今後の課題となる。

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