【製造】工業相がアユタヤ県の主要工業団地視察 洪水リスク管理に自信

タナコン新工業相は10月12日、バンコク北方のアユタヤ県にある主要工業団地を視察し、「洪水リスクは完全に管理下にあり、外国投資家は安心して事業を継続できる」と述べた。2011年の大洪水から14年、政府と民間の防災投資により、同地域の工業基盤は大幅に強靱化している。
視察先はバンパイン、ロジャナ、ハイテク、ナワナコンなど主要4工業団地で、同相は「堤防・排水システム・貯水池の整備は完了し、最悪の降雨シナリオにも耐え得る」と説明した。これらの団地は日系企業を中心に約500社が操業し、電機、自動車部品、精密機械など輸出産業が集まる。
タナコン氏は「日本を含む外国投資家が抱く懸念を払拭することが重要」と強調。タイ投資委員会(BOI)および工業団地公社(IEAT)と連携し、最新の防災インフラを現地確認するツアーを定期的に実施すると発表した。IEATによると、洪水被害以降の14年間でアユタヤ県の工業団地には総額1200億バーツ超の防災投資が行われた。堤防は高さ6〜8メートル、延長約70キロに及び、地下排水ポンプも常時稼働体制にある。
また、アユタヤ県と隣接するアントン県では、チャオプラヤ川の流量制御ダムを活用した排水管理が強化された。タイ気象局と連動する早期警戒システムも導入され、異常降雨時には自動的にポンプが作動する仕組みとなっている。
2024年の雨季では降雨量が平年比18%増だったが、同県の工業団地で操業停止や浸水の報告はなく、堤防の効果が確認された。タナコン氏は「2011年の悪夢を繰り返すことはない」と述べ、タイを「ASEANで最も防災力の高い製造拠点」に育てると強調した。
BOIによると、2025年上半期の外国直接投資(FDI)申請額は前年同期比15.8%増の3820億バーツで、製造業が全体の72%を占める。日本企業の投資比率っは依然トップであり、アユタヤ県はその主要拠点として位置づけられている。
さらに、工業省は洪水リスクを「スマートデータベース」で一元管理する新プロジェクトを進めている。これは、降雨データ・河川水位・工場立地情報を統合し、リスク評価をリアルタイムで共有するシステム。2026年には全国の工業団地への導入が完了する見通しだ。
タナコン氏は「我々は“水に強いタイ産業”を世界に示したい」と述べ、海外投資家に対し長期的な信頼構築を訴えた。
