【商業】訪タイ外国人2510万人 空路拡大と地方インフラ整備が観光業成長の鍵

タイ観光スポーツ省の発表によると、2025年1月1日から10月12日までの外国人観光客数は累計2510万人となり、前年同期比7.5%減となった。世界経済の減速や航空便数の減少が影響したが、観光収入は依然として堅調で、タイ経済の主要牽引役となっている。
タイ国政府観光庁(TAT)のタパニー長官によると、年間目標を3700万人とする計画に変更はなく、第4四半期に向けて中国、インド、ASEAN近隣諸国からの旅行者誘致を強化する方針という。特に中国市場の回復が遅れており、2025年上半期の中国人観光客は前年同期比12%減の410万人にとどまった。TATは航空会社との座席供給拡大交渉を進め、冬季ダイヤでは週400便を新設する計画だ。
外国人観光客数(国籍別)であるが、1位マレーシア(360万人)、2位中国(410万人)、3位韓国(190万人)、4位インド(170万人)、5位ロシア(120万人)の順。日本からの訪問者は約68万人で、前年をわずかに上回った。TATは「日本市場は長期滞在・高支出層の比率が高く、観光収益への貢献度が大きい」と指摘する。
観光収入は同期間で約1兆1800億バーツに達し、GDPの約12%を占める。中でも地方観光の伸びが目立ち、チェンマイ、スコータイ、コンケンなど地方主要都市の宿泊者数は前年同期比15%増となった。TATは地方観光促進キャンペーン「Amazing Local Chapters」を10月からスタート。地元文化・食・エコツーリズムを組み合わせた新商品を推進する。
一方、宿泊業界では人手不足とコスト上昇が続く。タイホテル協会(THA)は「観光客の回復に比べ、ホテル従業員の再雇用が遅れている」と警鐘を鳴らす。特に地方都市では、最低賃金引き上げが人件費負担を押し上げている。政府は観光業を重点雇用産業と位置付け、再教育・外国語研修への補助金を拡充する予定だ。
TATは年末までに観光客数が3700万人に達すれば、総観光収入は1兆7000億バーツを超えると試算する。観光セクターの完全回復は航空路線拡大と地方インフラ整備が鍵を握る。2026年には新空港や国際鉄道網の開通でさらなる成長が期待されている。
