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【資源】タイ政府が電力開発計画を全面改定 安定供給・脱炭素・料金抑制を柱に

タイ政府は10月14日、エネルギー省が中心となって進めている「国家電力開発計画(PDP)」を全面的に見直す方針を発表した。電力需要の急増と再生可能エネルギー(再エネ)拡大を背景に、安定供給を最優先とする新戦略を2026年初頭に策定する。

エネルギー政策計画局(EPPO)のキラティ局長によると、新PDPでは電源構成・燃料調達・再エネ比率を抜本的に再設計する。現行のPDP2018(改訂版)は2023年に更新されたが、その後、電力需要が想定を上回るペースで伸びたほか、再エネも拡大。さらに乾季の電力逼迫と燃料輸入コストの上昇が顕著となり、計画改定の必要性が高まった。

新計画では、電力安定供給・脱炭素・料金抑制の3項目を政策の軸とする。再エネの比率は、2037年時点で全発電量の50%(現行計画では36%)へ引き上げることが目標。再エネの主力は太陽光と風力で、これに蓄電池(BESS)や小規模水力を組み合わせる。特に、北部・東北部での風力発電ゾーンの指定が検討されており、民間企業による分散電源投資を促す。

このほか、電力料金の安定化も大きな課題となっている。天然ガス発電が電源構成の約60%を占めるタイでは、国際ガス価格の変動が電気料金に直結。エネルギー省はLNG輸入契約の多様化と、メコン流域の小型ガス田開発を推進中だ。また、脱炭素目標に沿って、石炭火力の新設は凍結し、既存設備にはCO₂回収技術(CCUS)導入を義務付ける方向で調整している。

アヌティン首相は「エネルギーは経済の血液であり、持続可能な供給網が国の競争力を左右する」と述べ、タイ投資委員会(BOI)と連携して再エネ産業への投資優遇策を拡充する考えを示す。エネルギー省は、今後PDP改定に合わせて「スマートグリッド・ロードマップ」を策定。これは、AIとIoTを活用して発電・送電を最適化するもので、2030年までに全送電網をデジタル化する計画である。

一方、消費者の電力料金負担にも配慮する。2024年度第4四半期の電気料金(Ft単価)は1キロワット時当たり4.10バーツから3.95バーツへ引き下げられた。政府は「再エネ導入と料金抑制は両立可能」と強調しており、今後は地方のマイクログリッド支援や、企業の自家発電制度(Private PPA)の拡充も検討されている。

キラティ局長は「PDP改定は単なる数字の修正ではなく、タイが東南アジアの再エネ供給拠点へ進化するための国家戦略である」と述べた。

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