【社会】タイ野党党首 政府の危機対応能力を糾弾「オンライン詐欺対策遅い」
広告

最大野党・人民党のナタポン党首は、政府のオンライン詐欺対策が「軽すぎて遅すぎる」と痛烈に批判した。タイ近隣国に拠点を置く国際詐欺組織が活動を広げ、多くのタイ国民が被害に遭っているためだ。
タイ警察の統計によれば、2024年度上半期のサイバー詐欺被害額は約140億バーツに到達。通報件数は毎日1000件以上となり、被害者の約60%が銀行口座や電子ウォレットから資金を引き出されている。金融機関のセキュリティ技術向上にもかかわらず、被害は後を絶たない。
ナタポン氏は特に、若年層が高額リターンをうたう偽投資広告に誘い込まれている現状を指摘。社会問題化しているボイスフィッシングやロマンス詐欺に対し、政府は有効な対策を講じていないと批判する。
これに対しアヌティン首相は、通信委員会(NBTC)、金融監督当局(BOT)と連携し、24時間以内の凍結制度を厳格運用する方針を表明。さらに、銀行アプリの生体認証義務化、個人情報保護法(PDPA)強化など、追加措置を検討している。
一方、有識者は、被害を未然に防ぐには教育とリテラシー向上が不可欠と指摘。電子決済が急速に浸透する中、情報弱者ほど標的になりやすいからだ。企業側にも広告審査の徹底など社会的責任が問われている。国民の資産保護と警察捜査の実効性向上を両立できるかが、政府の危機対応能力を図る試金石となりそうだ。
