期間限定バンコク週報無料購読キャンペーン実施中

【貿易】タイ政府 米国と関税交渉を加速 19%相互関税の早期緩和目指す

タイ政府は、米国との間で進行中の相互関税協定交渉を加速させ、2025年内の合意を目指す。現在、米国はタイ産品に19%の相互関税を課しており、輸出産業への影響が懸念されている。アヌティン首相はマレーシアでのASEAN首脳会議および韓国でのAPEC首脳会議の場でトランプ米大統領と会談し、関税率の引き下げを求めた。

エクニティ財務相は「協定枠組み(Framework for Reciprocal Trade Agreement)は概ねタイに有利な内容であり、他のASEAN諸国と比べ不利な点は少ない」と指摘。協議では、希土類(レアアース)資源分野での協力覚書(MOU)も締結され、両国の経済関係は一層強化された。

協定枠組みでは、タイが米国製品の99%について輸入関税を撤廃する一方、米国は一部品目の関税を段階的にゼロとする。対象は医薬品、食料品、農産物など。

また、非関税障壁の撤廃も合意され、タイは米国の自動車安全基準やFDA認証を相互承認する。燃料用エタノールの輸入許可や医療機器認可手続きの迅速化も進める。

さらに、知的財産権・デジタル貿易分野でも協力が拡大。タイは電子商取引への課税を行わず、データ越境移転を認めることでデジタル産業投資を呼び込む。通信分野では外資規制を緩和し、映画のスクリーンクオータ制も撤廃する方向で調整が進んでいる。

一方、タイ国内産業保護の観点から、タイ荷主協議会(TNSC)は「自動車、農産品、消費財など競争圧力が大きい分野では段階的自由化を」と政府に提言。関税協定にはセーフガード条項を設け、過度な輸入増加時には調整措置を取れるよう求めている。

両国は年内に残る技術的論点を詰め、協定文書の署名・批准を経て2026年初頭の発効を目指す方針。米国通商代表部(USTR)は「タイはアジアで最も成熟した貿易相手国の一つ」と評価しており、発効後の貿易拡大効果は年間18.8億ドルに達すると見込まれている。

この記事がお役に立ちましたら
フォローをお願いします

シェアしていただければ幸いです
目次