【経済】海外投資家に「脱タイ株」の動き 指数は2カ月連続反発も売買代金が下落

タイ証券取引所(SET)によると、2025年10月までの10カ月間で、海外投資家はタイ株を累計1010億バーツの純売り越しとなるなど、「脱タイ株」の動きが続いている。株価指数は2カ月連続で反発したものの、売買代金は細り、外国人の資金流出が市場の重しとなっている。
10月単月では、外国人は45億バーツの純売り越しであった。1~10月の売買シェアを見ると、外国人が売買代金の51.8%を占め、次いで個人投資家31.8%、国内機関投資家9.77%、証券会社自己売買6.62%となる。SETと新興市場MAIを合わせた10月の平均売買代金は394億バーツで、前年同月比27.9%減と低水準にとどまり、年初来平均も426億バーツにとどまっている。
それでもSET指数は10月末時点で1309.5ポイントと前月比2.8%上昇し、年初来の下落率を6.5%まで縮小した。テクノロジーや金融など一部セクターに物色が入り、指数全体を押し上げた格好だ。
SETのソラポン上級副社長は、外国人の売り姿勢が続く背景として、長期化する米中貿易戦争、地政学リスク、米国の関税措置に加え、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを先送りするとの警戒感を挙げた。これらは新興国市場全体のリスク資産選好を冷やしているという。
もっとも、10月下旬に韓国で開かれたAPEC首脳会議を機に米中関係の緊張がやや和らいだことに加え、FRBが政策金利を0.25ポイント引き下げたことが投資家心理の支えとなり、タイ株も月末にかけて上昇基調を強めている。
また、別の統計では、2025年前半だけで外国人のタイ株保有額は約1.4兆バーツ減少し、保有残高は4.4兆バーツまで縮小している。タイ政府は長期株式投資ファンドの創設や、株式市場向け税制優遇の拡充など、市場てこ入れ策を相次いで打ち出しているが、外部要因の逆風を完全に打ち消すには至っていない。
タイ市場はアジアの中でも値動きが鈍い一方で、配当利回りや一部優良株のバリュエーションには割安感がある。外資が本格的に戻ってくるには、世界的な金利サイクルの落ち着きと、タイ国内の成長ストーリーの明確化が必要であり、当面は内需刺激策と構造改革の進み具合が、指数の方向感を左右することになりそうだ。
