【資源】配当利回り6%台続くPTT、ガス事業とトレーディングが今期収益を堅調に下支え

タイ国営石油・ガス大手PTTの2025年7〜9月期決算は、純利益が約198億バーツと前期比8%減となった。石油・石化市況の弱さにより、探鉱・生産や石油精製、石油化学など子会社の利益が縮小し、通常損益ベースの利益も前期比で2割近く落ち込んだためだ。一方で、原油価格の反発に伴う在庫評価益や為替・デリバティブ取引による特別利益が発生し、減益幅は一定程度抑えられた。
事業別では、PTT本体のガス分野が健闘した。ガス分離工場とガス調達・輸送事業は原料コストの低下に加え、トレーディング部門で輸送中商品の評価益やマージンの改善が寄与し、EBITDA(※1)は前期比2割超の増加となった。これに対し、石油精製事業は精製マージンと販売量の低下、石油化学事業はスプレッドの縮小が響いたものの、統合エネルギー企業としての分散ポートフォリオが全体の利益水準を下支えした格好だ。
PTTの配当政策は、純利益の少なくとも25%を配当に回すことを原則としており、直近数年の配当利回りは6〜7%台で推移している。2025年も中間配当0.90バーツを実施しており、現在の株価水準からみた予想配当利回りは6%前後と見込まれる。タイ証券取引所の統計でも、PTT株は過去5年平均でセクター平均を上回る配当利回りを維持しており、長期投資家にとって安定配当銘柄として位置づけられている。
通期ベースでは、2025年1〜9月期の累計純利益は約650億バーツに達し、通期会社計画のおよそ8割強をすでに稼ぎ出した。足元では世界景気の減速と原油価格の変動が続いているものの、第4四半期は停止していた一部ガス分離設備の再稼働や、石油・ガス開発子会社PTTEPの生産量増加が見込まれており、通常損益は前期横ばいから小幅改善というシナリオが有力だ。
もっとも、アナリストは世界経済の減速や原油価格急落が、在庫評価損や需要減少を通じてPTTの収益を押し下げるリスクを指摘する。一方で、ガス・電力・石油・石化・トレーディングを束ねる垂直統合モデルは、どの事業かが不調でも他分野の利益で補える構造であり、収益ボラティリティの低さが同社の強みである。
政府系企業としてエネルギー安全保障を担う役割も大きく、タイのエネルギー需要が中長期的に拡大するなかで、堅調なキャッシュフローと高水準の配当をどこまで維持できるかが、今後の焦点となる。
(※1)EBITDA(イービットダー):利払い前、税引き前、減価償却前利益の略称であり、企業が本業からどれだけ現金を生み出しているかを測る指標。利息や税金、減価償却といった会計上の要素を除くことで、事業そのものの収益力を把握しやすくなるため、企業価値評価や業界比較で広く用いられている。
