【三面】カンチャナブリ県で不法就労目的のミャンマー人33人を摘発 越境仲介のタイ人2人も逮捕
ミャンマーと国境を接する西部カンチャナブリ県でこのほど、密入国したミャンマー人33人が警察当局に逮捕された。あわせて、越境を手助けしたとされるタイ人2人も拘束され、人身取引と入管法違反の疑いで捜査が進められている。
報道によれば、一行は自然の抜け道を通って国境を越えた後、県内の幹線道路沿いで待機していたところを、事前情報を得ていた警察と国境警備隊により摘発された。取り調べに対し、ミャンマー人の多くがタイ国内での就労を目的としており、斡旋業者に1人あたり数千〜数万バーツの手数料を支払ったと供述している。過去の同様の事件でも、1人あたり3000〜20000バーツ前後の「越境料」が支払われていた例が報告されている。
カンチャナブリ県はミャンマーとの国境線が約370キロに及び、山岳地帯や森林地帯を通る非公式ルートが多い。タイ当局はパトロールを強化しているものの、景気低迷や政情不安を背景にミャンマー側からの越境希望者は後を絶たない状況だ。2024〜2025年にかけては、数十人規模の不法入国者が一度に摘発される事例が複数確認されており、越境移動が組織的なビジネスとして定着している実態もうかがえる。
タイ国内では、農業や建設、サービス業などで外国人労働者への依存度が高く、慢性的な人手不足が指摘されている。一方で、正規ルートによる就労許可の手続きは煩雑で時間もかかるため、求職者が仲介業者を通じて不法入国に頼るケースは一向に減らない。そのため、政府は、合法的な労働者受け入れ枠の拡大と同時に、密入国の取り締まりを強化する方針を打ち出しており、今回の摘発もその一環と位置付けられる。
当局は、ミャンマー国内の紛争や経済難に乗じて高額の越境料を要求する人身取引組織の実態解明を急ぐとともに、タイ側の雇用主や仲介者への取り締まりも強化する方針だ。国境管理と労働需要のバランスをどう取るかは、タイにとって安全保障と経済の両面にまたがる難題であり、今回の事件はその縮図となっている。
