【政治】タイ次期総選挙の鍵は地方有力者ネットワーク 世論調査で人民党とタイ威信党が一歩リード
タイ国内では2026年3月実施が見込まれる次期総選挙を前に、地方の有力者ネットワークと新興政党の動きが選挙結果を左右するとの見方が強まっている。タイ経済紙のコラムでは、各種世論調査の結果を分析し、政党間の支持競争と地方勢力の再編が進んでいる状況を指摘する。
スアンドゥシット世論調査センターが2025年11月下旬に実施した調査では、「どの政党が有利か」という問いに対し、現政権党であるタイ威信党が「政権担当能力」「資金力」「政局運営能力」など8項目で最も優位と評価された。具体的には、「政権担当の準備ができている」との回答が41.36%、「資源(資金)面の準備」が40.80%、「政治活動能力」が35.79%となった。一方、現最大野党の「人民党」は、「現代性」50.06%、「監視能力」41.69%、「コミュニケーション能力」34.39%といった項目で首位となり、イメージ面の強さが目立つ結果となった。
また、「比例代表でどの政党に投票するか」との質問では、国民党が26.25%でトップ、次いでタイ威信党22.02%、タクシン派・タイ貢献党12.54%となり、新興勢力と中堅政党が競り合う構図が浮かび上がる。同時に、いずれの政党も支持を決めていない有権者も一定割合存在し、選挙情勢はなお流動的だ。
一方、NIDA世論調査研究所が実施した地域別調査では、東部や中部、東北、北部それぞれで、支持政党や支持する首相候補について「まだ決めていない」とする回答が上位に入るなか、人民党とタイ威信党がトップを争う構図もみえてきた。東北地域では人民党の支持率がトップで、タイ貢献党とタイ威信党が僅差で追っている。
こうしたデータを踏まえ、コラムは地方有力者・政治家一族の動向が決定的な要因になると分析する。タイ威信党は従来から地方有力者とのネットワークを強みにしており、最近では小政党や有力家系の取り込みを進めている。これに対し、人民党はSNSやオンラインキャンペーンを通じた都市部・若年層への浸透を図ると同時に、一部地域では地域有力者との連携も模索している。
前回総選挙では人民党が第1党となりながら上院議員の妨害で政権樹立に至らず、その後の連立工作で政権構図が大きく変化した経緯がある。次回選挙でも、憲法改正や議会解散のタイミング、各党の連立戦略、そして地方有力者の去就が組み合わさり、結果が直前まで読みにくい状況が続く可能性が高い。日本企業の対応であるが、特に地方に工場や販売網を展開する企業は、地域ごとの政治力学が政策実行のスピードに影響しうる点を意識しておくことも必要だ。
