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【運輸】ナコンラチャシマ初の都市鉄道プロジェクト 全長18.9キロ20駅のLRT型PPP事業

タイの都市鉄道事業を担うタイ都市鉄道公社(MRTA)は、ナコンラチャシマ県(コラート)で初となる都市鉄道プロジェクト「オレンジ線」整備に向けた検討を本格化させている。同線は地方都市における初の都市鉄道案件と位置づけられ、地方の交通インフラ強化と都市開発を狙う政府方針の試金石となる計画だ。

オレンジ線は、LRT(ライトレールトランジット)方式の高架鉄道として計画されており、全長18.9キロ、20駅を設置する案が示されている。ルートは県北部のテープラット病院付近を起点に、ミットラパープ通りなど主要幹線道路を南下し、市中心部の商業施設や官公庁、大学キャンパスを経由して、東側のチョーホー共同駅付近までを結ぶ。駅リストには、ザ・モールやターミナル21コラート、技術専門学校、ラチャパット大学、ラチャモンコン工科大学、郊外住宅地や地方自治体事務所など、通勤・通学・買い物需要の高い地点が幅広く含まれる。

現在、MRTAはプロジェクトの詳細な実現可能性調査と環境影響評価(EIA)を進めており、おおむね12カ月程度で基本計画をまとめた上で、関係機関との協議と内閣承認を目指す流れだ。その後、民間資本を導入するPPP方式での事業化を想定しており、土木工事と軌道・電気システム、車両調達、運行・保守を一体で発注するスキームが検討されている。投資額は約116億5千万バーツと試算されている。

完成後は、慢性的な渋滞が続く市中心部の交通混雑緩和に加え、郊外から中心部への移動時間短縮や、地方都市における自家用車依存の是正が期待される。さらに、複線鉄道やバス路線との接続が想定されており、将来的には周辺地区でのトランジット・オリエンテッド・ディベロップメント(TOD)や住宅・商業開発の活性化にもつながることを期待する。コラートは東北地方の玄関口として工業団地や物流拠点が集積しており、鉄道整備は人材確保や通勤利便性の向上に寄与する可能性が高い。

日系企業にとっては、鉄道システム・車両・信号・通信、駅設備、沿線開発など幅広い分野で参画機会が見込まれる案件だ。バンコク首都圏での都市鉄道整備に続き、地方都市への展開が進めば、関連部品の現地調達や保守サービスの需要も拡大する。MRTAによる詳細計画とPPP入札スケジュールの公表が待たれるところだ。

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