【車両】中国系OMODA & JAECOOが11月のEV新車登録首位に 低価格SUVで攻勢

中国の自動車メーカーである奇瑞汽車(チェリー)が海外市場向けに展開するブランドOMODA & JAECOOは、11月のタイ国内電気自動車(EV)新規登録台数で首位となった。登録台数は合計2896台で、その大半を新型「JAECOO 5 EV」が占めたと発表している。価格を抑えたバッテリー式電気自動車(BEV)の投入により、中国勢の攻勢がタイ市場で一段と鮮明になってきた。
JAECOO 5 EVはBセグメントSUVに分類されるが、車体サイズはCセグメントに近く、全長4369ミリ、全幅1860ミリ、全高1655ミリ、ホイールベース2610ミリと、同社の上位モデルJ6よりひと回り小さい程度。エクステリアはヘッドライトからテールまで通るシャープなキャラクターラインと、18〜19インチのツートンアルミホイールが特徴となる。
インテリアには8インチのデジタルメーターと13.2インチの縦型センターディスプレーを搭載し、スマートフォンのワイヤレス充電、プッシュスタート、キーレスエントリー、アンビエントライトなどを標準装備する。ソニー製スピーカーのオーディオ、前後独立制御のオートエアコン、電動パーキングブレーキとオートホールド機能も備え、価格帯の割に装備はかなり充実している。
駆動用モーターは前輪駆動の単一モーター仕様で、最高出力211馬力、最大トルク288ニュートンメートル。0〜100 km/h加速は7.7秒で、リチウム鉄リン酸塩(LFP)電池58.9kWhを搭載し、1充電あたり航続距離は461 km(公表値)とされる。電動パワートレイン効率は94%に達し、高張力鋼を78%使用したボディ構造により、衝突エネルギー吸収性能も高めたとしている。
充電規格は急速充電のCCS2と3相交流(AC)に対応し、最新の運転支援システム(ADAS)13機能を備える。車線逸脱警報・抑制、ブラインドスポット検知、後方交差交通警報、前後方衝突警報など、タイ市場で求められる安全装備をほぼフル装備した形だ。
グレードは「Long Range Dynamic」と「Long Range Max」の2種類で、プロモーション価格はそれぞれ54万9000バーツと59万9000バーツと発表されている。 同クラスの日本車や欧州車EVと比べると大幅に安く、11月の新規登録で首位となった背景には、価格競争力と装備水準の高さがあるとみられる。
タイ法人トップのビル・チャン氏は、タイ消費者からの信頼はブランドの潜在力を示すものだとし、今後もEV技術への投資を続ける方針を表明した。JAECOOは12月中にJAECOO 5 EVの第1陣をタイに陸揚げし、年内から納車を本格化させる計画だ。
一方、タイのBEV市場全体も拡大が続いており、25年9月の100%EV登録台数は9800台で、乗用車登録の約2割を占めた。 安価な中国製EVの台頭は、既存メーカーにとって脅威であると同時に、タイが地域のEV組立・輸出拠点として成長するうえで避けて通れない現実ともなっている。
