【IT】AI建築で省エネ加速 タイ国立大学部棟でデジタルツイン実証スタート
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タイの建築分野でAIと省エネを組み合わせた新たな実証が始まった。チュラロンコン大学建築学部は、シスコ・システムズおよびタイIT大手MFECと組み、AIを活用したデジタルツイン建築「CU Living ARCH 5.0」を学部棟の一部約2000平方メートルで運用し始めた。建物内に設置したセンサーやカメラから、温度、照度、人の動き、空気質などのデータをリアルタイムで収集し、AIが空調や照明の制御を自動で最適化することで、エネルギー消費と快適性の両立を図る。
デジタルツインとは、現実の建物と同じ構造を仮想空間上に再現し、膨大なデータを基に運転状況を可視化・シミュレーションする仕組みで、設備の故障予測や改修効果の事前検証にも使える。プロジェクトはシスコの「Country Digital Acceleration」の一環で、ネットワーク機器やクラウド基盤に同社製品を用いる。大学は今後、対象面積を約2万8000平方メートルまで広げ、得られたノウハウを他大学や官公庁、民間企業と共有し、スマートビルの標準モデルとする考えだ。
国際機関の試算では、建物部門はタイの最終エネルギー消費の約19%、電力使用の約半分を占めるとされ、省エネポテンシャルが大きい分野。政府は長期戦略で2050年のカーボンニュートラルと、その前倒しも視野に入れたネットゼロ目標を掲げており、空調負荷の大きいオフィスや大学キャンパスでの省エネは達成の鍵になる。
タイで工場やオフィスを運営する日系企業にとっても、デジタルツインを活用したビル運営は、工業団地や大規模開発でのゼロエミッション要件への対応や、環境報告の高度化に直結するテーマとなりそうだ。
