【環境】タイ北部で水不足と越境河川汚染が同時進行 水資源の安全保障に赤信号

タイ中北部で水資源をめぐる懸念が急速に高まっている。ここ数週間、水供給の逼迫と河川汚染に関する報告が相次いでおり、専門家はタイが厳しい「水の安全保障」局面に入りつつあると指摘する。
北部チェンライ県などを流れるコック川では、ミャンマー・シャン州で行われている無許可の金鉱や希土類鉱山からの汚染物質が国境を越えて流入し、河川の水質を悪化。汚染水域では砒素の濃度がタイの基準値である1リットルあたり0.010ミリグラムを大きく上回る地点が複数確認されており、水産業や観光業に深刻な打撃を与えている。地元では魚のただれや炎症も報告され、住民の健康被害への懸念も広がっている。専門家によると、支流のサイ川では基準値の40倍を超える砒素が検出された地点もあるという。
政府は汚染管理局を通じてミャンマー側と協議を進めるほか、月次の水質モニタリング体制を敷いて監視を強めている。一方で、雨季にもかかわらず一部地域では貯水量が例年を下回る傾向もみられ、渇水と河川汚染という二つのリスクが同時に進行している状況だ。北部の農家や漁業者からは収入減少を訴える声が相次いでおり、地域経済への波及も懸念されている。健康調査でも、飲用水の確保のために毎月数千バーツを追加で支出している世帯が少なくないとの結果が示されており、生活コストの上昇も現地では深刻な課題となっている。
製造業にとって、工業用水の安定確保は操業継続の生命線だ。タイ北部やメコン流域に生産拠点や調達網を持つ日系企業にとっては、原材料調達や現地従業員の健康管理、さらには企業の社会的責任(CSR)対応の観点からも、今後の水質モニタリング結果や政府の対応策の進捗を注視する必要がある。北部での事業展開を検討する企業は、渇水期の水利用計画についても早めの備えが求められそうだ。
