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⼤塚オーミ陶業 複製陶板技術でタイ⽂化財保護を⽀援

医薬品・食品事業をグローバル展開する大塚ホールディングスの子会社「大塚オーミ陶業社」(本社:大阪市中央区)は、2023年9 月19 日から24年7 月15日までタイ・アユタヤのチャオサンプラヤ国立博物館で開催する「Making Process of CeramicBoard-imprinting Replicas of the Mural Paintingsinside Wat Ratchaburana Crypt」展に同社製作の複製陶板を出展している。耐久性が高く変色しない陶板(セラミックボード)が貴重な文化財を保存・活用する有効な手段の一つであることを紹介するため開催された同展示会では、大塚オーミ陶業社が2022 年に製作したアユタヤ県内のラチャブラナ寺院地下聖堂に描かれた壁画の複製陶板製作経緯や製作技術などを紹介。同社はさらに、日本で製作した複製陶板を持ち込み、貴重な文化財を陶板に置き換えることの利便性・有用性を訴える。

目次

記録的大洪水で水没した壁画が蘇る

ラチャブラナ寺院の壁画

今回、複製陶板として展示されているラチャブラナ寺院の壁画は、約600 年前のアユタヤ朝前期に描かれたものであるが、2011 年10 月の記録的大洪水により水没。今も修復作業が終わっておらず、一般市民への公開は中止されている。そこで、水没前の鮮やかな壁画を広く鑑賞してもらうため、被災前に撮影されたデジタルデータを使い、高精細の複製陶板が製作されることになった。

この複製陶板製作は、タイ文化相芸術局が依頼したものであるが、壁画撮影および高精細デジタルデータ作成を担当したのは、複製ビジネスプランおよびソリューションを提供するセラミックイメージ社(Ceramica Image Co.,Ltd.)だ。同社が壁画を撮影したのは水没する僅か数日前。このデータを基に災前の壁画の形状や色彩・質感が忠実に再現された。

重要⽂化財保護と鑑賞機会拡⼤を両⽴

大塚オーミ陶業社・大杉栄嗣社長(右)とセラミックイメージ社ジャカワン社長

大塚オーミ陶業社とセラミックイメージ社のジャカワン・バンダプラニート社長との“出会い”は2006年。同社長が、大塚ホールディングスのグループ会社である大塚化学社の招待を受け、鳴戸工場および大塚国際美術館(徳島県鳴門市)を視察したことに始まる。

1998年3月開館の大塚国際美術館には現在1088点の作品が展示されており、年間約60万人が訪れる。この時の日本視察で、半永久保存が可能であり、しかもイミテーションの範疇を超えた高精細・高精彩を実現できる陶板の持つ可能性に魅せられたジャカワン社長は、2006年8月16日、タイの多角経営企業であるAF グループ(本部:バンコク)に陶板事業部門を立ち上げ、シリントン王女殿下(当時)50 歳のお誕生日を祝う肖像画(セラミックポートレート)を製作し献上。これが大塚オーミ陶業社との初コラボ事業となった。さらに、翌07年2月7日にはシリキット王妃陛下(同)の72歳のお誕生日を記念した肖像画を製作・献上。そして、複製陶板事業を本格化させるため09年3月、セラミック・イメージ社を創立した。

クルアワン寺院(バンコク)
クルアワン寺院(バンコク)

細かいクラックや汚れも忠実に再現する大型複製陶板(セラミックアート)への取り組みであるが、まず2009年5月、タイ国立博物館敷地内に保管されている「初期ラタナコーシン王朝絵図」から「仏陀の父母の結婚式」の場面を切り取った複製陶板を製作。これはタイ国立博物館で展示されることになった。2016年にはクルアワン寺院(バンコク)の壁面に「国王と仏教」「ラマ9世王の業績」をテーマとするセラミックアートを取り付けた。高所での撮影が必要となり危険なことから、オリジナルキャンパスにアーティストが手描きするなど製作にほぼ2年を費やしたが、完成がラマ9 世王の崩御と重なり、公式公開は今も延期されている。そして、3作目となるのが現在閉鎖されているラーチャブラナ院地下聖堂の壁画(前出)となる。

湿気・虫・埃・見学などにより文化財の状態は悪化していく。そのため、タイ文化省アユタヤ芸術事務所のスカンヤ・バオヌート所長は、重要文化財を保護する一方で鑑賞機会拡大を実現できる大塚オーミ陶業社の技術を高く評価する。同社の大杉栄嗣社長(写真右)も、文化財は気候や災害だけでなく、人為的な破壊も行なわれていると指摘。「重要文化財保護は困難なミッションであるが、大塚オーミ陶業の複製陶板製作技術により発見時の状態で半永久的に鑑賞してもらうことができる」と力を込める。

他社の追随許さぬ高精細・高精彩を実現する技術

国宝・風神雷神図屏風の複製陶板

ところで、大塚ホールデングスが複製陶板事業に参入した経緯であるが、毎年浚渫を行っていた吉野川(徳島県)を流れる大量の砂を使い、大型・軽量の建材(タイル)を製する技術を大塚化学社が開発したことに始まる。その後、滋賀県信楽のタイルメーカーに実験プラントを立ち上げプリント技術も開発。大型陶板にセラミック塗料による色付けなど行うことで、精密な複製陶板の製作が可能となった。

大型陶板製作技術は7カ国で特許を取得するなど画期的な技術であるが、いまでは複数の企業が大型陶板事業に参入。それでも忠実に複製して高精細・高精彩を実現する技術に関して大塚オーミ陶業社は他社の追随を許さない。

今回、アユタヤで展示されている国宝・風神雷神図屏風は京都国立博物館に寄託されているが、紙であるため運搬が困難。しかし、複製陶板が製作されたことで健仁寺大書院(京都府)での常時展示が可能となった。陶板で複製することにより、実物は保存しながら鑑賞機会の拡大を可能とし、その文化的価値や魅力を国内外で広く永続的に伝えることができるわけだ。大杉社長は、「海外での文化財保護を継続していく」と明言。タイでの第4作候補のひとつとしては、北部チェンマイ県内のウモーン寺院が挙がっている。

「 Making Process of Ceramic Board-imprinting Replicas of the Mural Paintings inside Wat Ratchaburana Crypt 」 展

  • 2023年9月19日~ 24年7月15日
  • 午前9時~午後4時
  • チャオサンプラヤ国立博物館(アユタヤ県)

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