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『ASEAN SUSTAINABLE ENERGY WEEK 2024』 EV充電から太陽光発電関連へと主役が交代

カーボンニュートラル社会の実現をテーマとするアジア最大級のエネルギー総合展示会「ASEANSUSTAINABLE ENERGY WEEK 2024(ASEW2024)」が7月3~5日、バンコクのシリキット王妃国立会議場で開催された。再生可能エネルギーおよび電気自動車セクターを中心に展示面積2万平方㍍を超える会場に約1500のブランドが集まった。

 再生可能エネルギー分野では太陽光発電システム関連機器および風力発電のブースが存在感を示していた。なかでも、太陽光発電システムのブースでは、太陽光パネル、パネルを建物や構造物に取り付けるためのフレームワーク、電気ケーブル、インバーター、エネルギー貯蔵装置、管理プラットフォームなど工場や商業ビルだけでなく、家庭での設置をサポートするブースも目立った。

この背景のひとつが、タイ政府が実施している「市民向けソーラープロジェクト」だ。これは一般市民が所有する家屋やビルに設置された太陽光パネルで発電・生成した電力のうち余剰電力を配電事業者(PEA、MEA)に売電することができるというもの。事前登録が必要で、買い取り上限は100メガワット(MW)となる。すでに登録電力は90 MW を超えており、近く締め切られる見通しだ。なお、100 MWはおおよそ2万5000~ 3万世帯の年間消費電力量に相当する。

今年7月10日のエネルギー事業監督委員会では、今年9月~ 12月の電気料金を引き上げる案が承認されたが、ウクライナ紛争長期化、米ソ対立、中東産油国の生産調整などからして、今後電気料金の継続上昇を否定できる楽観的要素は見えてこない。そのため、タイでは市民の家庭用太陽光発電への関心が高まっている。

一方、ASEWは昨年も開催されているが、再生可能エネルギー関連トレンドの変化としては、2023年にはEV充電器の展示が多かったのに対し、今年はそれが少なくなり、太陽光発電関連機器が種類・数量ともに増えた点。特に、太陽光パネルは小型から特大サイズまでと選択肢が広がり、利用者のニーズに柔軟に対応できるようになった。

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東京都中⼩企業振興公社は昨年に続き出展

2015年12月にタイ事務所を開設した公益財団法人・東京都中小企業振興公社は昨年に続き、今年も東京都企業4社の出展を支援。日本企業のユニークな技術を紹介した。

エヌケーシステム社(東京都港区)

タイ風力エネルギー協会は7月3日、タイにおける風力発電の一般的なビジネス情報、風力発電所の電力輸送問題、イノベーション、風力発電・太陽光発電の統合、新政策提言まで幅広いトピックを盛り込んだセミナーを開催したが、今回、光ファイバを使った温度測定システムの洋上風力発電での利用を提案したのが、タイ初出展となるエヌケーシステム社(東京都港区)だ。

光ファイバを温度センサ―として使う利点は、長距離・広範囲をカバーし、高熱に耐えることができるほか、電磁波の影響を受けないため防爆エリアでもすぐに設置が可能であること。温度計を大量に設置する必要がなく、光ファイバを設置するだけで計測可能なため、製鉄所、発電プラント、長いトンネルでの火災検知や予防保全などに使われる。

この光ファイバを使った温度測定の原理は、アジアで初めてノーベル物理学賞を受賞したインド人のチャンドラセカール・ラマン氏が開発。日本では20 数年前から温度測定に使われていたが、近年、各種デバイスおよび計算式が開発されたことで活用範囲が広がった。

同社DAS グループの小川豊シニアエグゼクティブエキスパートによれば、最近脚光を浴びているのが洋上風力発電所の海底送電線の温度を管理するための利用という。送電線の中に光ファイバを組み込むだけで全線の温度監視が可能となり、発熱している箇所や不具合の起きている箇所を探ることができる。

さらに、電流の流れと温度の動きを相関的に計測し、新たに開発された計算式を適用することで、海底送電線の埋設されている深さを知ることが可能。小川氏によれば、洋上風力発電が盛んな欧州では日本より先に光ファイバを使っていたが、温度計としての利用に限定されており、送電線埋設の深さなどは知ることができなかったという。海底送電線は台風などの自然災害で海流が変わると、深さが変わるため、常にアップデートしていかないと、船舶のアンカーなどが引っ掛かり、多大な損害を生むことになってしまう。そのため、同社のシステムを導入することで結果として、洋上風力発電事業のコスト削減が実現できる。

なお、サウジアラビアでは数㌔におよぶ硫黄の輸送管の温度管理に利用されている。硫黄は130度で液体となるが、140度を超えると成分が変化して焦げてしまう。そして、130度以下では個体となる。そのため、輸送管全線での温度管理が極めて重要になる。

スケッチ社(東京都台東区)

タイでも電気料金が高止まりしているが、電気料金を抑える最善策が省エネだ。そのための選択肢としてタイ初出展のスケッチ社(東京都台東区)は窓や室外機を遮熱断熱することによる空調費の大幅削減を提案した。

同社の省エネガラスコートは内窓ガラスに塗るだけで遮熱断熱効果を発揮。島田靖弘代表取締役によれば、電気料金を20~30%削減することが期待できるという。日本では新築住宅には特殊金属膜をコーティングした2 枚の板ガラスの間に乾燥空気を封入したLow-E複層ガラスを使用するケースが多い。ただ、これはかなりのコスト高となり、1枚ガラスに省エネガラスコートを塗った場合の約4倍となる。日本では冬があるため、結露が生じにくく暖房効果を高めることのできるLow-E複層ガラスは利用価値があるが、タイは常夏のため、1枚ガラスにコーティング処理をすることで事足りると指摘する。ちなみに、省エネガラスコート処理をした1 枚ガラスのUV(紫外線)カット率は99%で、しかも1 回塗ると15 年間効果が持続する。

また、IR(赤外線)カット率は90%と世界最高レベルを誇り、処理したガラスの遮熱性能は大幅にアップする。このため、夏しかないタイに日本や欧米基準をそのまま導入する必要はないのではないか、と島田氏は話す。

スケッチは今回、外窓ガラスやタイルに汚れが付きにくくなる防汚コート剤「強帯電防止・超親水セルフクリーニングコート」も併せて紹介した。同社が開発し特許を取得したこのコート剤を外窓ガラスに塗布することで、強力な帯電防止効果を発揮し、雨水でのセルフクリーニングが可能となる。そのため、汚れがつきにくくなり、メンテナンスコストの大幅削減が期待できる。コーティング処理をしても汚れてくると反射率は低下し、熱伝導率が上がり、遮熱断熱効果は低下してしまう。そのため、内窓と外窓の両面にコーティング処理をすることでより高い省エネ効果が期待できる。なお、同社ではタイではコート剤の対象基材としてソーラーパネルも視野に入れている。

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