24 年のインフレ率は0.4% 商務省予想レンジに 25 年予想は0.3〜1.3%
タイ商務省貿易政策・戦略事務局(TPSO)のプンポン局長は2025 年1 月6 日、24 年12 月のヘッドライン・インフレ率(変動幅の大きい生鮮食品価格とエネルギー価格も考慮した総合インフレ率)を前年比1.23%増と発表した。ヘッドライン・インフレ率は23 年10 月に25 カ月ぶりで前年比減となって以来、6 カ月連続のマイナスとなっていたが、24 年4 月以降は一転してプラスが続いている。


12 月にインフレ率が上昇したのは、前年同月には低価格に抑えられていた燃油価格が上昇したためだ。このほか、生鮮果実・植物油・調味料・清涼飲料水の値上がりにより飲食品価格の上がったことも影響した。ただ、その他の品目に大きな値動きはなかった
今年11 月時点でのタイのヘッドライン・インフレ率はプラス0.95%となっており、世界129 国・地域中、下から19 番目の低い数値となっている。また、ASEAN では8 カ国(タイ・ラオス・フィリピン・シンガポール・インドネシア・マレーシア・ベトナム・ブルネイ)が経済統計を公表しているが、タイのインフレ率は下から2 番目に低かった。なお、23 年通年の平均インフレ率は1.23%であり、139 カ国・地域中、下から数えて第9 位だった。
12 月のタイ国内物価上昇率であるが、飲食品を除く主要品目の物価は前年比1.21 %増となった。主要品目で値上がりが特に目立つのは、ディーゼル(軽油)、ガソホール、ベンジン(ハイオク)など燃油。このほかには、電気、レンタルルーム、フライト、スクールバス、理髪、美容などの料金も上昇した。一方、値下がりした主要品目は、シャンプー、ボディーソープ、衛生用品(洗剤、トイレ洗浄剤)、男女衣類など。
アルコール飲料を除く飲食品の価格については前年比1.28%増となった。値上がりした主要品目は、生鮮果物(ランプ―タン・マンゴ・バナナ・スイカ・ドリアン・パイナップルなど)、コーヒー、清涼飲料水、調味料(乾燥ココナッツ、カキソース、練り唐辛子)、精米、小麦粉、もち米、アヒル、鶏卵、水産品(プラーニン、エビ、プラートゥー、プラータップティン)、調理済食品など。その一方で値下がりしたのは、生鮮野菜(唐辛子、トマト、ライム、パッカナ、キャベツ、白菜、パクチー)、鶏卵、豚肉、焼き鳥、乳酸飲料、植物油、デリバリー食品などとなる。
ヘッドライン・インフレ率の指標となる11 月の消費者物価指数(CPI)は108.28(基準年は2019 年)。また、エネルギー価格と生鮮食品価格を除くコアインフレ率は前年比0.79%増となり、前月(24 年11 月)の数字(前年比0.80%増)から僅かに減少した。
2024 年通年の平均ヘッドライン・インフレ率は前年比0.4%増となった。上昇要因としては、飲食品(特に生鮮果実・清涼飲料数)の値上がりが大きかった。その一方で価格が低減した主要品目としては、政府物価対策の対象品目である電気・ディーゼル(軽油)が代表格となっている。なお、タイ商務省は24年のヘッドライン・インフレ率を0.2%~ 0.8%(中央値0.5%)と予測していた。
一方、2025 年のヘッドライン・インフレ率であるが、同省では0.3%から1.3%のレンジを予測する(中央値0.8%)。インフレ率上昇の要因として、❶経済成長、民間投資と民間消費の拡大、訪タイ観光客の増加により商品およびサービスに対する需要が高まること、❷1 ㍑当たりの上限が33 バーツであるタイ国内のディーゼル価格は今年、24 年第1 四半期および第2四半期の平均価格を上回ることが確実であること―などを挙げる。
これに対し、インフレ率を抑制する要因としては、❶政府による物価対策が継続すること(特に電気料金とLPG 料金)❷エルニーニョ現象・ラニーニャ現象により2024 年は生鮮野菜・果実の価格が高止まりしていたこと❸不動産業界・自動車業界の業績停滞により借家家賃、自動車価格の伸びが期待できないこと―などを商務省では挙げている。
⽣産者物価指数(PPI)
生産者の卸売価格を指数化した生産者物価指数(PPI)であるが、2024 年12 月は前年比0.9%増の111.0(基準年は2015 年)、前月比では0.2%減となった。PPI は企業業績・株価の先行指標ともなり、上昇が続いた場合、物価高騰を嫌った消費者の買い控えによる経済回復の遅れなどが危惧される。
12 月の部門別PPI であるが、工業製品部門は前年比0.5%増。ゴム・プラスチック製品、工作機械・道具など複数の製造業の指数が増加した。
鉱業部門は前年比で5.3%減少。原油、天然ガス、鉱物製品の価格が低下したためだ。また、農業漁業部門はアブラヤシ、天然ゴム、ドリアン、パイナップル、エビ、豚などの重要が高く、同6.0%の伸びを示した。
製造業⽣産指数(MPI)
工業省工業経済事務局(OIE)が2024 年12 月27 日に発表した同年11 月の製造業生産指数(MPI)は93.41 で同年前月と同一だった。前年比では3.58%減少している。
MPI は過去最長の18 カ月連続でマイナスとなり、2024 年4月にようやくプラスに転じたが、5 月、6 月とマイナスが継続。しかし、7 月は輸出が過去28 カ月で最大の成長率を実現したことでMPI の伸びを後押ししたが、8 月は再び落ち込みをみせ、9 月はさらに指数を下げた。その後、10 月は僅かに持ち直し、11 月も同一の指数となった。
11 月に前月比でプラスとなったのは、石油製品産業、エレクトロニックス産業、鉄産業、繊維産業、PC 産業。逆にマイナスとなったのは、ゴム・プラスチック産業、自動車産業、食品加工産業だった。
MPI は2016 年を基準年(=100)として製造業の生産活動を指数化したものであり、景気動向を判断する指標となっている。