農林⽔産物⾒本市『JAPAN SELECTION 』 タイ初の⺠間主催
物流・広告・販促プロモーションを軸にアウトソーシングサービスを提供する「ディー・エム広告社」(以下、DMK)は1月18日から20日までの3日間、オールジャパンで取り組むB2B特化型の日本産農林水産物・食品試食見本市「JAPANSELECTION 2024 ~ FOOD STYLE ~」を開催した。
日本の農林水産省は2020年11月、日本産農林水産物・食品の輸出額目標である2025年2兆円、2030年5兆円を達成するため「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」をとりまとめた。
ただ、それ以降も日本はプロモーションを自治体ごとに開催する傾向が強く、オールジャパンで取り組む大規模なB2B施策はなかった。このなか、タイのバイヤーから「日本産品が一堂に会する見本市を開催して欲しい」との声が上がっていたことを受け、農林水産物・食品の取引拡大を目指すタイ側バイヤー、そしてタイ側バイヤーとの取引拡大もしくはタイ市場への参入を狙う日本全国のサプライヤーに商談の場を提供するJAPAN SELECTION 2024の準備をDMKが23年7月より急ピッチで進めた。後援には農林水産省、在タイ日本国大使館、日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所、中小機構、徳島県が入った。
今回のイベントの特徴として、公的機関ではなく民間企業が主催している点を挙げることができる。DMKでアドバイザーを務める笹本達也氏は、「商品の輸入からタイ市場参入後のプロモーションまで一気通貫で出展者を支援するのは官公庁主催では難しい。しかし民間主催ならそれが可能」と言い切る。同氏はさらに公的機関は商談・契約件数を重視するが、出展者にとっては利益が何より重要として、「実利の出るイベント」の必要性を強調する。小規模取引も大切ではあるが、やはり大規模な取引をしたいというのがサプライヤー側の本音であることは否定できない。そこで、「試食➡条件確認➡購買」とのスピード感を重視するタイ人バイヤーに対し、会場内での購入手配を可能にするため、イベント開催前にタイ食品医薬品局(FDA)から商品輸入ライセンスを取得できるよう調整。申請はDMK が代行した。これで、見本市でありがちな、購入希望者がいてもタイで販売することができないというジレンマから解放された。また、タイへの輸出ルートがない場合にはDMKの輸出スキームを利用。さらに、期間限定でEC サイトでも出展者の商品を販売するとともに、その間に卸業者との接点を見つけてもらい、同社から卸業者にバトンタッチする。「タイにまだ輸入されていない産品をタイで販売したいと本気で思う日本企業が主役となる商談会にしたい」と話す笹本氏だ。
⽇本⾷レストラン店舗数は過去最多にJAPAN SELECTION 2024開催の背景にあるのは、タイにおける和食ニーズの高まりだ。日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所は今年1月 10日、「2023年度タイ国日本食レストラン調査」の結果を発表。それによれば、2023年の日本食レストラン店舗数は過去最多の5751店舗で、前年比8%増となった。店舗数は世界第6位となる。都県別では、バンコク近郊5県(ナコンパトム・ノンタブリ・パトゥムタニ・サムットプラカン・サムットサコン)、地方の大都市での増加が目立つ。なお、2018年と2023年の日本食レストラン店舗数を比較すると、バンコク、バンコク近郊5県、その他の地方で、それぞれ1.5倍、2.2倍、2.5倍に増加しており、全体では1.9倍となる。
また、業種により明暗が分かれた。店舗数が一番多い寿司は減少数が増加数を上回り前年比4.1%減となった。これに対し、ラーメン・すき/しゃぶ・居酒屋・焼肉は店舗数が伸びている。
ジェトロが行った関係者へのヒアリングによると、タイ人消費者の外食利用はコロナ禍前の状態に戻っており、タイを訪れる観光客数も完全ではないが回復傾向にあるという。客足・売上については、コロナ禍以外の要因はあるものの、コロナ禍前の 2019年と比較して80~90%にまで回復していると見る向きが多い。
一方、関係者からは、日本食レストラン間および他分野のレストランとの競合がこれまでにも増して激化しているとの声が多数聞かれたという。近年急激に店舗数を伸ばしていた寿司店が今年度調査では減少したが、競合激化もその一因となったようだ。ただ、ラーメン、すき/しゃぶ、居酒屋、焼肉については、関係者からニーズが高い業種と認識されており、店舗数が増える傾向にある。
また、複数の日本食レストラン事業者が食材費および人件費の高騰を課題に挙げている。このほか、常に変化していくタイ人消費者のニーズ・トレンドへの対応、タイ地方の消費者にマッチした日本食の提案なども課題として浮上した。
日本食レストランは日本からの農林水産物・食品の輸出拡大にとり重要な存在となる。ジェトロバンコク事務所の黒田淳一郎所長は、「ここ数年、タイ地方でも日本食レストランの数は増え続けているが、日本からの食品輸出を増やしていくためには、地方の日本食レストランでも日本産食品を使用してもうらことが重要」と話す。そのため、ジェトロは今年度、北部チェンマイ県および周辺、東北部コンケン県および周辺の飲食店や小売店などをターゲットにした商談会や展示会を開催した。ジェトロがバンコクではなくタイの地方で展示会や商談会を行うのは初めてとなる。さらに、昨年11月からは両地域で大規模プロモーション「Made in JAPAN on tour」を展開。タイでの日本食レストランの増加を日本産食品の輸出・販路拡大につなげるべく、今後も地方での取り組みを強化していく方針だ。