【日系企業】ホンダ AセグメントEV「Super-ONE」タイに投入 99万バーツ~で30台限定

ホンダ・オートモービル・タイランド(HATC)は8月14日、小型電気自動車(EV)「Honda Super-ONE(スーパーワン)」をタイ市場に投入すると発表した。価格は99万バーツで、日本からの完成車輸入(CBU)により、2026年内は30台限定で販売する。予約受け付けは8月17日午前10時から午後5時までの1日限りで、納車は11月から始まる予定だ。
Super-ONEは、商用EV「N-VAN e」、小型EV「N-ONE e」に続くホンダのAセグメントEVの第3弾で、軽自動車規格「Nシリーズ」の流れをくむ。車体は低重心・ワイドなデザインを採用し、ホイールベースのトラック幅を50mm拡大するなど、走行性能を重視した設計となっている。車両重量は1167kgで、モーターは前輪駆動、最大トルクは162ニュートンメートル。出力は通常時47キロワット(約64馬力)だが、専用の「BOOSTモード」では70キロワット(約95馬力)まで引き上げられる。バッテリー容量は29.6キロワット時で、航続距離は最大253km(NEDC基準)としている。
走行モードはECON、NORMAL、CITY、SPORT、BOOSTの5種類を用意。このうちCITYはタイ市場向けに新たに開発したモードで、渋滞時にアクセル一つでほぼブレーキを使わずに走行できる機能を備える。SPORTモードでは7段の疑似変速機能とパドルシフトを搭載し、BOOSTモードでは疑似的なエンジン音を再現する音響システムも組み込まれている。車両サイズは全長3569mm、全幅1573mm、全高1616mm、ホイールベース2516mmとコンパクトで、タイヤは185/55R15を採用する。安全装備や快適装備よりも、走りの楽しさを前面に打ち出した設計が特徴といえる。
苦戦するホンダのEV戦略
今回の限定販売の背景には、ホンダがタイのEV市場で苦戦してきた事情がある。中国メーカーとの提携で展開してきたEVモデルや、大型EV開発計画「0シリーズ」(0セダン、0SUV、0アルファ)は縮小・凍結を余儀なくされており、既存のEVモデル「e:N1」「e:N2」も価格競争力で中国系ブランドに後れを取ってきた。タイの新車市場全体でも、中国系ブランドを中心とするEVの値下げ競争が続いており、日系メーカー各社は対応を迫られている状況にある。
一方、Super-ONEは日本国内で2026年5月の正式発売以降、想定を上回る受注を集めており、先行予約は7000台を超え、5月単月の販売実績は乗用車全体で31位にランクインするなど好調に推移している。タイでも30台という限られた台数ながら、価格やスペックへの反応は好意的という。
ホンダにとって今回の投入は、単に販売台数を積み上げる狙いというより、タイの消費者にホンダのEV技術やブランドイメージを再認識してもらう機会と位置付けられているとみられる。低価格重視の路線ではなく、走行性能や個性を重視する層に向けた製品を投入することで、将来的にe:N1やe:N2のような量産モデルの市場開拓につなげる狙いがあるとみられる。
タイの自動車市場は、EV販売の伸びが目立つ一方でその過半数が完成車輸入に依存しており、国内生産や部品産業への波及効果が乏しいとの指摘が業界内で強まっている。Super-ONEのような少量限定の輸入モデルは、直接的な産業インパクトは小さいものの、ブランド力の強化を通じて中長期的な市場地位の維持につながる可能性がある。
