【経済】強いバーツが収益圧迫 年末に向け輸出・観光・農業へ広範な影響
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タイの地場銀行カシコン銀行傘下の総合研究所カシコン・リサーチ・センター(KRC)は9月9日、バーツが朝方31.58まで上昇し午後に31.74へ戻したと報告した。9月はバーツ通貨高が加速しており、年初来で約7.5%の上昇、アジアで最強通貨の一角となった。要因は米利下げ観測に伴うドル安、金価格の上昇、外資によるタイ国債の買い越し。短期的な攻防戦は31.50となり、過度の変動は当局が抑えると見る向きが多い。
経済への波及はすでに多岐に渡っており、輸出は数量・単価とも競争力が落ち、ドル建て収入のバーツ換算が縮む。観光は訪日と同様、為替が消費マインドに直結する。農業はコメや畑作の収穫期に価格調整が難しく、現金収入が目減りする。タイ商工会議所は「バーツ通貨は実力以上に買われており、金や仮想通貨の取引が相場をゆがめる」と警鐘を鳴らす。
一方、政策であるが、当局の過度介入は「通貨操作」批判の火種にもなるため、ボラ抑制と市場機能の両立が焦点となる。企業は、価格再交渉、分散調達、決済通貨の多様化を検討するとともに、為替優位を生かす輸入や投資を前倒すことも論点となりそうだ。
