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【経済】タイ経済の成長を抑制する高い債務残高、NESDCが警告

タイの経済は債務の増大が成長を抑制するサイクルに陥っていると国家経済社会開発評議会(NESDC)が警告している。9月11日に開催された2025年NESDC年次セミナーでウィチャヤユットNESDC副事務局長は、「タイでは家庭、企業、公共部門全体の債務残高が非常に高く、国の経済成長の可能性を制限している」と指摘した。

特に懸念されるのは、コロナ禍以降増加した不良債権(NPL)であり、特に脆弱な家庭層においてその傾向が顕著であるとした。また、米国の報復関税や第3四半期に顕著となっている経済活動鈍化の影響で企業のNPLや賠償債務が増加。結果として、債務リスクを高め、返済能力を低下させ、信用を損うことになる。

また、政府の債務も国内総生産(GDP)比で増加しており、債務対GDP比率70%の上限維持が課題となっている。国際通貨基金(IMF)は、この比率をこれ以上増加させないよう警告しており、代わりに収入の増加や予算効率の向上に焦点を当てるべきだと助言する。

債務とNPLの増加は、「悪魔のループ」と呼ばれるサイクルを作り出す。高い債務が借入を誘発し、その借入がGDP成長を抑制し、そして、経済を刺激するためにさらなる借入が必要になる。ウィチャヤユット副事務局長は、この「悪魔のループ」を打破することは複雑で時間がかかると強調。「債務が高く、GDP成長が低い場合、経済は苦しみ、そこから新たな問題が生じ、再びGDPに影響を与える」と悲観視する。

現在、政府借入といった短期的対策は限界に達しており、金融機関は貸し出しに慎重な姿勢を崩さない。このなかで、持続的な経済成長を実現するためには、家庭の所得を引き上げることが最も実現的な方法であるが、そのためには長期的な対策が必要となる。

新政府に対しては、追加の債務を避けることを最優先にすべきだとウィチャヤユット副事務局長は指摘。「短期的な対策を超えて、実際に経済成長を推進できる中期的施策に重点を置くべきだ」と訴える。そのための主要施策として以下の項目を挙げている。

  1. 国内市場の整備・拡大:米国市場への輸出には貿易障壁や商業的圧力があり、といって中国に依存するのも難しい。国内消費を促進し、輸入を減らすことが経済を支える助けになる。
  2. 輸出拡大と新市場の開拓:一部のタイ製品は低関税が適用されるため、これらを活用して輸出を拡大することが求められる。
  3. 中小企業(SME)の支援:中小企業に対しては特化した支援が必要であるが、銀行はしばしば大企業への融資に偏っている。企業の規模や業種に応じた支援策が求められる。

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