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【政治】ASEAN議会連盟会合でカンボジアとタイが非難合戦 遠のく緊張緩和

マレーシアのクアラルンプールで開かれたASEAN議会連盟(AIPA)の会合で、カンボジア国民議会のフオン・スダリ議長が9月18日、タイによる武力行使と停戦違反を非難。紛争地域へのASEAN監視団(IOT)派遣を提案した。スダリ氏は、タイがカンボジア兵18人を不当に拘束し、国境に有刺鉄線を違法に設置したと主張した。

しかし、このカンボジアの言い分に対し、タイ代表団は即時反論。カンボジア側がBM-21多連装ロケットで民間施設・家屋とインフラを攻撃し、地雷(PMN-2)の敷設を続けていると糾弾、「国際法違反であることは明白」と訴えた。会合は結局、カンボジア側の緊急議題の上程を退けた。

両国の主張が平行線を辿っている理由のひとつに国境の扱いがある。タイ側は、国境検問所の再開は3つの条件(重火器撤去、地雷の共同除去、越境犯罪共同取締まり)の履行が前提と主張。タイは、カンボジア国内の50カ所超の犯罪拠点情報を入手しており、人身売買など広域犯罪の解体が不可欠だと訴える。

一方、経済面への影響は軽くない。両国の国境は日常物流と通勤通学の動脈であり、検問所の閉鎖が長引けば、生鮮品や部材の配送に遅れが出る。タイの小売や製造は在庫を最小限にしているため、通関の詰まりは在庫とマネーフローに直結する。とりわけ、東部回廊やバンコク圏から国境経由で近隣国市場へ運ぶ軽量・高付加製品は1日の遅れで販路を失うことになりかねない。

一方、カンボジア側の観光・小売はタイ人客の落ち込みで打撃を受け、非公式チャネルに荷が流れる誘因にもなる。治安不安と物流遅延が重なると、保険料の上振れや運賃のサーチャージが発生し、価格転嫁の余地が小さい中小企業には負担が重い。

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