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【不動産】オフィス供給過剰でタイ商業不動産市場が競争激化 新規法人登録数減少

タイ商業用不動産市場は2025年から26年にかけて厳しい環境が続く見通しだ。サイアム商業銀行の経済情報センター(SCB EIC)が発表した最新報告によれば、オフィス賃貸市場では供給過剰が一段と鮮明になり、賃料の伸びが抑制されるとの警告が示された。

需要は2025年に前年比1%増にとどまり、26年も横ばいと予測されている。背景には、国内経済成長の鈍化や投資家信頼の回復遅れ、新規法人登録数の減少、雇用の縮小、さらには米中摩擦をはじめとする国際的な不透明要因がある。コロナ禍以降に定着したハイブリッド勤務も、物理的なオフィス需要を押し下げている。

一方、建設中プロジェクトの供給流入により、2025~26年のオフィスストックは年率2.5~4.5%拡大する見込みだ。需要を大きく上回る供給増は、2024年時点で81%だった稼働率を押し下げ、特にグレードAやA+の物件で影響が顕著となる見通しである。

小売賃貸市場についても成長は限定的で、25~26年は年率1~2%の増加にとどまると予測される。家計債務の高さや内需の弱さに加え、中国人旅行者の減少が商業施設への来客数を押し下げている。SCB EICは、観光依存型の小売市場が長引く景気停滞にさらされていると分析する。

中規模や中小のデベロッパーは資金力とブランド力で優位に立つ大手との競争を強いられ、生き残り戦略が不可欠となる。報告書は、開発計画の慎重な進め方、テナント構成の多様化や付加価値サービスの導入、開発・運営両面でのコスト効率化、環境認証を取得した持続可能な物件への重点投資を推奨している。

SCB EICは、タイ商業不動産市場の将来は「差別化」と「持続可能性」が鍵を握ると強調。単なる床面積の提供から、テナントの利便性を高める統合的なサービスや、ESGに配慮した開発へと転換できるかどうかが試金石になる。

バンコクで進むコワーキング施設利用

タイ不動産協会の統計によると、2024年のバンコク都心部オフィス稼働率は79%まで低下した。特にコワーキング施設やサテライトオフィスの利用が広がり、従来型オフィスの需要減少が鮮明になっている。一方、物流施設やデータセンターといった分野では堅調な需要が続き、投資マネーが一部シフトする兆しもある。外資系大手デベロッパーは賃貸オフィスよりも複合開発や再開発案件へ重点を移しており、市場構造の変化が進んでいる。

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