【資源】ガルフが事業多角化加速 エネルギーから通信・デジタルへ拡大
タイ最大の民間発電会社であるガルフ・デベロップメントは、従来のエネルギー分野に加え、通信、デジタル、インフラ事業へと進出し、複合企業体へと変貌を遂げている。2024年の総収入は1246億2200万バーツで前年比7%増、コア利益は18.4億バーツと18%増加した。これはインタッチホールディングス(INTUCH)との統合によるシナジー成果が大きい。同社は2025年4月1日にタイ証券取引所に正式上場している。
同社は今後3年間で1300億バーツを投資する計画を掲げ、発電事業に加え、通信衛星、インフラ整備、デジタルサービスといった分野にも注力する。再生可能エネルギーでは、12件・合計649MWの太陽光発電プロジェクトが進行中。これらの取り組みで今年、「Renewable Energy Deal of the Year – Thailand」を受賞した。
また、通信分野ではAISの株式の40.4%を保有し、タイ国内で最大の通信インフラを持つことになった。さらにタイコムの株式を40%以上保有しており、衛星通信でも強い基盤を持つ。インフラ分野ではレムチャバン港第3期、マプタプット工業港開発第3期、M6・M81高速道路など国家的プロジェクトに参画している。
デジタル分野ではシングレルやグーグルと連携し、タイ国内でデータセンター事業を展開するほか、仮想通貨取引所バイナンスと合弁でデジタル資産取引所「GULF Binance」を設立した。特にGoogle Distributed Cloudによる高セキュリティのソブリンクラウドは、政府や産業界の需要に応えると期待されている。
国際展開も積極的で、米国では出力1200MWのジャクソン・ガス火力発電所に49%出資、英国では1500MWの洋上風力発電所Outer Dowsingに24.99%を出資している。これにより、2033年までに発電容量2万3356MW、持分ベース1万2750MWの達成を目指す。
ガルフは9月末から10月初旬にかけて普通社債を発行し、3年物から10年物まで4回に分けて募集する。トリス・レーティングスから「AA-」格付けを得ており、金融市場での信頼は厚い。最高財務責任者ユパピン氏は「エネルギーとデジタルの統合が資産、資本、キャッシュフローを強化した」と述べ、今後の事業拡大に自信を示した。
