【政治】新空軍司令官が戦略発表 「空の防衛にはデジタルとAIの融合が不可欠」

会計年度替わりに伴い、タイ空軍司令官に就任したセークサン空軍大将はこのほど、中部サラブリ県ムアンレック郡の空軍士官学校で開かれた会合において、2025年度の空軍戦略を正式に説明した。セークサン司令官は、国防の近代化と地域防衛協力の強化を柱とする新方針を打ち出し、「空軍の能力を多次元的に発展させ、アジア太平洋地域での安全保障の要となる」と述べた。
発表によると、タイ空軍は今後、女性の戦闘機パイロット育成を推進し、性別にかかわらず能力本位で操縦士を登用する方針を示した。タイでは2020年代に入ってから、女性パイロットの訓練課程への参加が本格化しており、現在までに10名以上が戦闘機操縦資格を取得している。新司令官は「女性の登用は空軍の柔軟性と社会的信頼を高めるものである」と強調した。
また、セークサン司令官は最新鋭ドローンの導入と対ドローン防衛能力の強化を重点課題として挙げた。タイ空軍は既に国産ドローン「TIGER SHARK」シリーズを試験運用しており、今後は国防技術研究所(DTI)や民間企業との共同開発を進める方針だ。近年、国境監視や災害救援、麻薬密輸対策など非軍事分野での無人機運用が増加しており、同司令官は「新たな空の防衛はデジタルとAIの融合が不可欠」と述べた。
一方で、老朽化が進むF-16戦闘機の更新計画については、米国製機の後継機種導入を含めて検討中であると説明した。空軍関係筋によれば、予算は段階的に確保され、2026年度以降に初期発注が見込まれている。これにより、空軍の主力戦闘機隊の平均稼働年数を現在の25年から15年に短縮することを目標とする。
タイの防衛予算は2025年度で約1560億バーツに達し、うち航空関連費が全体の22%を占める。国防省は空軍近代化を「国際協調における安全保障投資」と位置づけ、ASEAN域内での共同訓練や災害対応演習の拡充を進めている。
セークサン司令官は会見の最後に「防衛とは単なる武力ではなく、国民の信頼と技術の力」と述べ、科学技術教育と士官学校改革にも意欲を示した。
