期間限定バンコク週報無料購読キャンペーン実施中

【政治】首相がカンボジア国境政策の正当性強調 支援記録を野外放映し理解促す

タイとカンボジアの国境地帯で、カンボジア人の不法滞在者がタイ領内に居座っている問題をめぐり、タイ軍の対応に一部批判が出ていることについて、アヌティン首相は10月13日、タイの対カンボジア戦略は「法と倫理に基づいた正当なものである」との見解を示した。

首相は、東部サケオ県の国境地域で展開中の啓発活動について説明し、「過去にタイがカンボジア難民にどのような支援を行ったかを知ってもらうことが目的」と述べた。現在、野外映画のような形式でドキュメンタリー映像を上映しており、1979年のカンボジア内戦時にタイ政府が行った人道支援の記録を紹介している。上映会はカンボジア系住民の反発を招いたものの、政府は「歴史的事実の共有を通じて相互理解を促す意図がある」と強調する。

サケオ県はカンボジアとの国境約165キロを接しており、内戦終結後も越境移民や密貿易、土地紛争などの問題を抱えてきた。国防省によれば、同県では依然として約1万人規模のカンボジア人がタイ側に居住しており、その一部は農業労働力として地域経済を支えている。今回の映像上映は、過去の人道支援を背景に「対立ではなく共存」を訴える政府広報活動の一環とのことだ。

アヌティン首相は、「タイ政府の行動は国際法とASEAN憲章に則ったものであり、隣国との友好を損なう意図はない」と強調。また、「国境地帯の治安維持と人権尊重の両立を図ることが、地域の安定に不可欠である」と述べた。

外交筋によれば、カンボジア政府はこの件について正式な抗議を行っておらず、現時点では両国間の緊張は高まっていない。むしろ、経済協力委員会を通じた国境貿易拡大やインフラ連結事業など、実務面での連携が徐々にではあるが進展している。アヌティン政権は、国境地域を「平和経済回廊」と位置づけ、観光促進・物流拠点整備を含む開発計画を進めたい考えだ。首相は「歴史を振り返りつつ、未来志向の関係を築く」と述べ、国民の理解と協力を呼びかけた。

この記事がお役に立ちましたら
フォローをお願いします

シェアしていただければ幸いです
目次