【車両】豪州の新規制でタイ自動車輸出が90万台に減少 CO₂規制対応が急務に

カシコンリサーチセンター(KResearch)は、2025年のタイ自動車輸出台数が90万台に減少し、近年維持してきた100万台超の水準を下回るとの見通しを示した。主な原因は、最大輸出先の豪州が導入した新しい車両輸入基準だ。豪州向けは全体の28%を占めるが、2025年1~7月の輸出台数は前年同期比16%減、金額ベースでは17.3%減となった。
豪州は今年初めから2つの枠組みを施行している。ひとつは「新車両燃費基準(NVES)」で、CO₂排出量を車種別に制限。2025年7月以降、基準超過車には罰金が科されることになった。乗用車は1km当たり141g、ピックアップ車・PPV(乗用ピックアップ)は210gが上限となる。もうひとつは「自動緊急ブレーキ(AEB)」装備の義務化で、3月1日以降、すべての輸入車に適用された。
CO₂上限は段階的に厳格化され、2028年には乗用車が68g/km、ピックアップが122g/kmと、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)以外は事実上輸入困難な水準となる。このため豪州ではHEVやPHEVの需要が急増し、2025年1~7月の輸入は前年同期比34.7%増となった。
しかし、タイ生産車はこの潮流に乗り切れていない。HEV・PHEVの豪州向け輸出は15.1%減。理由は、①PHEV輸出用生産体制が国内で未整備であること、②既存HEVのCO₂排出が新基準に適合しないこと、の2点。その結果、豪州市場におけるタイ製乗用車のシェアは2%減、商用車は5%減となった。
豪州市場では中国・韓国・米国・南アフリカ製の低公害車が台頭し、輸出拠点としてのタイの地位が揺らぎつつある。今後の課題は、タイが高付加価値車の生産拠点として再構築できるかである。中国勢の攻勢、米国の輸入関税引き上げなど、外的圧力は強い。さらに、南アフリカなどEUとのFTAを持つ国々が新たな競合拠点として台頭している。
カシコンリサーチは「CO₂規制への対応を怠れば、タイはASEAN自動車産業のハブとしての地位を失う」と警鐘を鳴らす。タイ政府とBOI(投資委員会)は現在、電動車向けインセンティブ拡充と次世代車工場誘致を急いでいる。
