【経済】タイ政府が景気下支え策を発表 内需拡大のため公共投資の執行率引き上げ
アヌティン副首相兼内務相は10月11日、内閣経済政策委員会後の記者会見で「第4四半期の景気を確実に下支えする」と述べ、短期的な内需拡大と通貨バーツの安定を両立させる新たな経済運営方針を発表した。
同首相によると、政府は今期、公共投資の執行率を85%に引き上げるとともに、歳出補正予算を年内に閣議決定する方針という。歳出の重点は、農家支援、エネルギー補助、観光促進の3分野。特に原油価格上昇による電気料金・燃料費の上昇を抑えるため、エネルギー基金を通じた燃料補助を継続する。
また、財務省は中小企業(SME)向け融資支援策を拡充。政府系金融機関(GHB、BAAC、SME Bank)を通じて総額2000億バーツ規模の融資枠を設ける。アヌティン氏は「景気刺激のための財政出動は持続可能な範囲で行う」と述べ、財政規律との両立に配慮する姿勢を示した。
通貨バーツの動向についてタイ中央銀行(BOT)は現時点で為替介入を行わず、市場原理による安定化を優先している。ウィタイ新総裁は「為替は実体経済に見合った水準に戻りつつある」と述べ、過度な変動は限定的との見方を示す。
また、国家経済社会開発評議会(NESDC)は2025年のGDP成長率を2.8〜3.2%と予測。輸出は前年比2.5%増、民間消費は3.0%増を見込む。観光収入が堅調に推移しており、政府は年末に向けて「タイ・ショッピング・フェスティバル」など内需喚起イベントを集中的に展開する計画だ。
アヌティン首相は「我々の最優先課題は雇用と購買力の維持」と強調し、雇用保険基金を活用した技能訓練プログラムを全国に拡大する方針を明らかにしている。労働省によると、2025年第3四半期の完全失業率は1.05%と低水準を維持しているが、観光・製造分野では人手不足が続いている。
