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【資源】ASEAN、老朽化送電網が成長の足かせに スマートグリッド整備が急務

再生可能エネルギーの導入が進むASEANで、老朽化した送電網が成長の足かせになりつつある。英エネルギー研究機関エンバーによると、地域の電力網の多くは石炭火力を前提に設計されており、太陽光・風力の変動出力に対応できない構造が課題となっている。

特にベトナムでは発電量が需要を上回っても送電制約で電力が浪費されるほか、フィリピンでは停電による損失が年間20億ドル規模に達する。こうした電力不安定が地域全体で年間約23億ドルの産業損失を生んでいると試算されている。

この課題を解決する中核技術がスマートグリッドであり、デジタルセンサーやAI解析を活用し発電と需要をリアルタイムで最適化する。タイではすでにバンコクでスマートメーターの実証導入が進み、送電ロスを約8%削減した。また、シンガポールは電力網の「デジタルツイン(仮想双子)」を構築し、故障リスクを事前検知している。

アジア開発銀行(ADB)はASEAN全体で少なくとも40億〜100億ドルの投資が必要と試算。グリーンボンドや気候ファンドを活用した資金調達も進みつつあり、特に日本と中国の民間資本が支援を拡大している。

一方、制度面では域内での電力相互接続「ASEANパワーグリッド」構想が進むものの、標準化と規制調整の遅れが課題となっている。専門家は「スマートグリッドは電線やソフトだけでなく、ASEANの産業競争力そのものへの投資」と指摘。再エネ普及、停電削減、雇用創出を同時に実現する仕組みとして、電力のデジタル化は地域経済の持続的成長を支える鍵となる。

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