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【経済】タイ経済団体 今年の輸出9.5~10%増と予測 労働法改正に強い懸念

タイ民間3団体会議(JSCCIB)は、2025年のタイ輸出が前年比9.5~10%増と、当初見通しの2~3%増から大きく上振れするとの予測を示した。ただし、この伸びが国内経済に与える影響は限定的で、国内総生産(GDP)押し上げ効果は0.4ポイント程度にとどまる可能性が高いと警告している。

タイ商工会議所会頭は、世界景気の持ち直しや米国の関税措置をめぐる不透明感の後退を背景に、工業製品を中心とする新規受注が増えていると説明。その一方で、「輸出拡大の多くはタイで組み立てるトランシップ品であり、部品は輸入に頼っている」と指摘。国内部材の使用比率が低いことが成長の足かせになっていると述べた。

同会頭は、こうしたトランシップ輸出が米国の監視対象となるリスクにも言及。原産地を偽装した迂回輸出と見なされた場合、追加関税などの制裁を受け、タイ企業の競争力や税負担に深刻な影響が出かねないためである。

JSCCIBは、政府に対して公共支出の加速と、いわゆる「クイック・ビッグウィン」政策との連動を求めている。具体的には、公共調達で国産品の利用を促す「メイド・イン・タイランド」キャンペーン、消費を下支えする「コン・ラ・クルン・プラス」(半額共済型のコペイメント制度)などの施策を迅速に実行するよう提言した。

JSCCIBは2025年のタイGDP成長率見通しを1.8~2.2%のレンジとし、前年2024年の2.5%成長にほぼ届く水準とみている。これは国家経済社会開発評議会(NESDC)や財政政策局など公的機関の見通しとほぼ同水準であり、輸出の急回復があっても全体の成長テンポは鈍いままとの認識で一致している。

一方、タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ会長は、労働保護法、クリーンエア法、工場法の3法案に強い懸念を表明する。これらの法案には、標準労働時間を週48時間から40時間に短縮し、有害作業は35時間に制限することや、完全週休2日制の義務化、リモートワーク推進などの規定が含まれている。JSCCIBは、景気が減速している局面で企業コストを押し上げることは得策でないとして、慎重な審議を求めた。

タイ政府は、こうした懸念に応える形で、440億バーツ規模の追加景気対策としてコペイメント制度の拡充を決定。2500万人前後の国民が日用品購入の補助を受けられる見込みだ。輸出統計だけを見れば「二桁成長」と派手に映るが、その中身の多くが低付加価値であれば、国内の賃金や投資には跳ね返りにくい。JSCCIBのメッセージは、輸出の量だけでなく質の転換と、労働・環境規制とのバランスをどう取るかが、タイ経済の次の課題であることを示している。

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