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【商業】タイ金融当局 暗号資産による新決済サービス導入へ 対象は外国人旅行者

タイ証券取引委員会(SEC)とタイ中央銀行、反マネーロンダリング対策局(AMLO)は、外国人旅行者が保有する暗号資産をバーツに交換し、国内店舗で使用できる新決済サービス「Tourist DigiPay」を開始すると発表した。対象者は海外からの旅行者で、暗号資産をウォレットにチャージし、滞在中にQRコード決済で利用できる仕組みだ。

利用者は最初に本人確認(KYC)手続きを行い、デジタル資産ウォレットと旅行者用電子マネーウォレットの2つを開設する。両ウォレット間で暗号資産をバーツに自動変換することで、従来の暗号資産決済に比べて店舗側のリスクと手間が抑えられる点が特徴だ。1アカウントあたりの利用上限は、加盟店QR決済で月最大50万バーツ、個人QR決済で月5万バーツに設定されている。

使用可能な店舗は一般小売・飲食・観光関連サービスに限定され、宝飾店やカジノ、骨董商など高リスク業種では利用できない。出国時に残高がある場合は、入国時に指定した事業者を通じて再び暗号資産に戻す。返金額は最初に交換した額を上限とすることで、不正資金の流入や利益目的の投機性を抑える狙いがある。

この取り組みは、暗号資産をそのまま商取引に用いるのではなく、「一度バーツへ変換して利用する」点が特徴。SECは「暗号資産の直接決済は価格変動とAMLリスクが大きく、規制下での変換方式が現実的な運用となる」と説明する。

他国でも観光地で暗号資産決済を導入する例は増えているが、通貨変換を公式インフラに組み込むケースはまだ限定的であり、タイは制度設計面で先行する形だ。

旅行業界にとっては観光支出の拡大が期待される。タイ国政府観光庁(TAT)が公表したデータによれば、2024年の外国人観光客数はさらに回復傾向にあり、特にデジタル決済への対応はアジア・中東・欧州の旅行者層が重視するサービスのひとつとなっている。

一方で、制度が定着するためには、加盟店教育、トラブル時のサポート窓口、為替レート透明性の確保など実務面の整備が不可欠となる。今回の制度は18カ月の試験運用として開始される予定であり、実利用のデータを基に制度改善を行う方針だ。

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