【政治】米国がタイとの関税交渉を一時停止 カンボジアとの国境紛争再燃で先行き不透明感
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11月15日、米政府はタイとカンボジアの国境紛争が再燃している状況を踏まえ、両国が和平宣言の履行をあらためて約束するまで、タイとの関税交渉を一時的に停止するとタイ側に通告した。タイ外務省のニコンデート報道官が明らかにした。
タイとカンボジアは先に、トランプ米大統領の立ち会いのもとで国境紛争の沈静化に向けた和平宣言に署名していたが、その後も国境地帯ではカンボジア側の挑発行為が続いており、今回の決定につながった。ニコンデート報道官によれば、タイ政府は米側の判断に「失望している」としつつも、事態の早期収束に向けカンボジア側との協議を継続するとしている。
また、トランプ大統領はアヌティン首相との電話会談で、「タイとカンボジアが既存のメカニズムを通じて問題を解決することに米政府は介入しない」と伝え、紛争そのものには直接関与しない姿勢を示したという。
タイ・カンボジア国境をめぐっては、プレアビヒア(タイ名:カオプラウィハーン)寺院などの周辺領有権を発端とする対立が長年続いている。過去には両国軍の衝突で死傷者が出たほか、数十万人規模の住民が避難を余儀なくされており、国際司法裁判所(ICJ)の判決後も完全な解決には至っていない。
一方、米国は中国に次ぐタイの主要貿易相手国であり、電気・電子機器、自動車、ゴム製品など幅広い製品を輸入。タイの輸出市場の多様化が進むなかでも、対米輸出は依然として重要な収入源とされ、関税交渉の停滞は一部産業に不確実性をもたらしかねない。
市場では、国境紛争の長期化が投資家心理を冷やし、周辺国を含めたサプライチェーンにも影響を与えるとの懸念も出ている。タイ政府としては、和平プロセスを進めることで米国との経済・通商関係の安定を確保したい考えだ。
