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【社会】資金洗浄対策事務所を装う押収金返還詐欺に注意喚起 偽メールで個人情報狙う手口が横行

タイ政府は、資金洗浄対策事務所(AMLO)を名乗る詐欺が横行しているとして、国民に対し警戒を呼びかけている。最近確認された事例では、「AMLOが特殊詐欺のコールセンターから押収した資金を被害者に返還する」との名目でメールなどを送りつけ、返還手続きと称して個人情報を提出させようとする手口が用いられている。

政府報道によれば、偽のメールやSNSアカウントはAMLOのロゴや公的文書風の文面を巧妙に模倣しており、受信者に対し身分証番号、銀行口座番号、ワンタイムパスワード(OTP)などの秘匿情報を入力させようとする。AMLOは、押収資産の返還手続きを理由に一般市民へメールやSNSで直接連絡することはなく、手数料の支払いを求めることもないと改めて強調した。

タイでは2021年以降、コールセンター詐欺や投資詐欺が社会問題となっており、政府は大規模な一斉取り締まりを続けている。デジタル経済社会省によれば、2021年からの摘発で数百億バーツ規模の資産が押収され、その一部を被害者への補償に充てることにした。しかし、こうした経緯を逆手に取り、「押収金を返還する」と称して個人情報を盗み出す新手の詐欺が登場することになった。

政府は、AMLOや警察、各銀行の公式アカウントは限られたドメイン名や認証マーク付きのSNSのみで運用されており、不審なメールやメッセージを受け取った場合は、リンクを開かず公式サイトやコールセンターに自ら確認するよう呼びかけ。また、未知の相手に対し身分証番号やOTP、銀行アプリのパスワードを教えないことが最も有効な防御策だとして、繰り返し注意喚起している。

タイ証券市場でも、詐欺グループと関連が疑われる企業の株価急落など、市場全体に不信感が広がる事案も相次いでいる。金融当局は、資金洗浄対策の徹底と同時に、投資家・消費者の金融リテラシー向上が不可欠だと指摘する。

押収金返還を前面に出す今回の詐欺は、実在する制度や行政措置を巧みに利用している点で、従来型の「なりすまし詐欺」より発見が難しい。被害拡大を防ぐには、行政側の周知徹底だけでなく、市民一人ひとりが「簡単にお金は戻ってこない」「急かす連絡は疑ってかかる」という基本的な心構えを持てるかどうかが試されていると言えそうだ。

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