【商業】タイ南部大洪水 ソンクラなど4県は浸水が2㍍超え 観光当局は危機管理センター開設
タイ南部の洪水が観光需要を直撃している。タイ国政府観光庁(TAT)によると、ソンクラ県では11月の観光収入が前年同月比8.5%減の約19億バーツに落ち込む見通しだ。11月19日以降の豪雨で南部10県が浸水し、過去10年以上で最も深刻な水害となっている。とりわけ県都ハジャイの被害が大きい。
10県のうちナコンシタマラート、パッタルン、サトゥン、クラビ、スラタニなど6県は、浸水が落ち着きつつあるものの道路の一部は通行止めのまま。一方、ソンクラ、ヤラ、パタニ、ナラティワートの4県では浸水深が1㍍を超え、場所によっては2㍍以上に達しており、住民と観光客の足が完全に奪われている。
TATのタパニ総裁は、洪水が1週間以内に収束すれば、2025年通年のマレーシア人来訪者数は460万人と2024年比7%減にとどまるが、回復が遅れれば455万人と8%減まで落ち込む可能性があると指摘。ソンクラに限ると、12月のマレーシア人観光客は最悪の場合18%減となり、観光収入の打撃は一段と大きくなる。ハートヤイ市内や空港周辺では、地元客と外国人客合わせて約8000人がホテルやターミナルに足止めされており、その9割をマレーシアからの旅行者が占めている。
TATは11月25日、バンコク本部内に危機管理センターを開設し、24時間対応のコールセンターや観光警察と連携して被災地の情報と救援要請を一元管理する体制を整えた。同センターは各国の大使館や領事館、旅行会社と情報を共有し、ホテルに滞在する観光客の避難や移動を支援するほか、日次のファクトシートを発行して誤情報の拡散を防ぐ役割も担う。
なお、TATは、11月のソンクラ県内旅行回数を24万3150回と見込み、前年比6.9%減と試算する。南部全体では旅行者数は微増にとどまるものの、観光収入は11月が1.8%減の161億バーツ、12月も1.6%減の176億バーツに落ち込む見通しだ。年末年始にかけて日本企業の出張や視察も集中する時期であり、南部での工場や店舗を持つ企業は、従業員の安全確保と物流ルートの代替確保を早めに検討する必要がある。
