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【貿易】タイ・カンボジア外交摩擦がタイ輸出企業を直撃 飲料・食品・化粧品が販売戦略再構築へ

タイとカンボジアの外交摩擦が5カ月ほど続いていることで、カンボジア向け輸出が大きな打撃を受けている。タイ企業は、第3四半期だけで数千万〜数億バーツ規模の売上減に直面しており、カンボジアを含むCLMV市場全体の販売が半減した企業も出ている。タイ英字紙ネーションWEBサイト版が伝えた。

エナジードリンク「カラバオ・デーン」を展開するカラバオ・グループのサティアンCEOは、タイ国内ではシェアが過去最高を記録した一方で、カンボジア市場は大きく落ち込んだことを明らかにした。同社は、タイとカンボジアが対立している影響で「数億バーツ規模」の売上が失われたと試算する。現在、カンボジアではナショナリズムが高まり、インフルエンサーがタイ製品の不買をあおる投稿を繰り返しており、その結果、カンボジア向け輸出が急減したという。CLMV4カ国向け売上は、第3四半期に44%減と大幅に落ち込み、自社ブランド製品の売上も5%減となった。

インスタントラーメン「ママー」を製造するタイ・プレジデントフーズも、主力輸出先の1つであるカンボジア市場で苦戦している。同社によると、カンボジアは輸出全体の17〜18%を占める重要市場であり、現地生産拠点も持つが、第3四半期の売上は前年同期比12.17%減、海外売上は約3割減となった。そのため、新たな輸出先開拓を急いでいる。

乳製品やジュース、ココナツウォーターを扱うマリー・グループも、国境閉鎖の影響を強く受けた。エカリンCEOは、特に乳製品がカンボジア市場の打撃を受けているとし、現地ディストリビューターと緊密に連携し、情勢が改善した際にすぐ市場に戻れるよう在庫を準備しているという。「この問題は一時的なものと信じており、撤退する考えはない」とのことだ。

化粧品大手カーマートも、カンボジア向け輸出が事実上止まった。同社のウォンウィワット社長によれば、公式輸出だけでなく、タイ・カンボジア国境のロン・クルア市場を経由する非公式ルートも途絶え、この3カ月は毎月700万〜800万バーツの売上減が続いているという。このほか、ミャンマー市場でも、別途毎月1300万〜1400万バーツの売上減が出ており、同社は来年の政府間交渉による正常化に期待をかける。

必需品メーカーの関係者は、一部のタイ製品がカンボジア向けパッケージの表記をタイ語からクメール語に切り替え、政治色を薄める工夫を始めていると明かす。外交問題が長期化すれば、タイ企業はブランド戦略や言語表記の面でも、よりきめ細かなローカライズが求められることになりそうだ。

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