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【不動産】タイ高級住宅市場 購入者は「本当に買うべきか」「価格に見合う価値があるか」徹底吟味

タイの高級住宅市場で購入者の行動が静かに変化している。国際不動産コンサルタントのナイトフランク・タイランドの調査によると、景気の不透明感、高止まりする金利、家計債務の重さを背景に、富裕層を含む購買層が「欲しいから買う」という感情的な判断から、「本当に買うべきか」「価格に見合う価値があるか」を徹底的に吟味する姿勢へと移行しているという。

同社マネージングディレクターのナッタ氏は、最新の調査結果として「かつては気に入った物件があれば比較的短期間で契約に踏み切るケースが多かったが、今は複数のプロジェクトを時間をかけて比較検討する傾向が明確になっている」と指摘する。物件の立地やブランドだけでなく、管理体制、共用施設の実用性、将来の資産価値まで含めて、細かくチェックする購入者が増えているという。

購入動機の中心も、「ステータスとしての所有」から「長期的なリターンと実需の両立」へと変わりつつある。価格が高額であるほど、購入者は「本当にこの価格に見合うのか」「説明されている仕様やサービスが現実にどこまで担保されているのか」を繰り返し問い直す。パンフレットやショールームの雰囲気だけでは決めず、実際の施工品質やデベロッパーの実績、過去プロジェクトでのトラブルの有無など、確認事項は一段と多くなっているという。

こうした慎重姿勢は、開発側にも変化を迫る。高級ブランドや華美なデザインだけでは販売が難しく、「価格の妥当性」と「目に見える価値」が重要になる。具体的には、管理費と提供サービスのバランス、実際に使いやすい間取り、将来のリノベーションのしやすさ、周辺インフラの整備計画など、生活者目線の要素が問われるようになっている。

一方で、この傾向は市場の健全化につながる側面もある。購入者が情報を集め、デベロッパーを比較し、納得できる案件にのみ資金を投じることで、品質競争が促されるためだ。金利環境が不透明で家計にとって借り入れ負担が重い状況だからこそ、高級住宅市場でも「冷静な目で見極める」時代に入ったと言えよう。デベロッパーには、物語性だけでない「実質的な価値」を示すことが求められている。

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