【環境】 バンコク都庁 PM2.5悪化で自宅勤務要請 建設現場・工場・黒煙車両の監視強化

バンコク都のチャチャート知事は、12月4日に開かれたバンコク都庁幹部会議で、PM2.5による大気汚染の悪化を踏まえ、都職員を含む関係機関に対し在宅勤務の活用を改めて呼びかけるとともに、建設現場や工場、黒煙車両の監視および取り締まり強化を指示した。同会議は移動による排ガスを抑える目的から、都庁の会議室に集まらず、オンライン形式で実施された。
知事はまず、直近で都が担当した2つの大規模事業への協力に謝意を示した。まず王室関連の葬儀行事であり、混乱なく円滑に運営できたとして、市民からも高い評価を受けたと報告。そして「Amazing Thailand Marathon Bangkok 2025」では、王妃が実際に走行したコースを含め、道路の安全確保や街路灯の整備などが問題なく機能した点を評価した。
一方で、今後の「急ぎの課題」として、①PM2.5対策、②年末の海水逆流への備え、③路上販売や建設工事の秩序維持の3点を挙げた。とりわけPM2.5については、12月4日のリモートワーク(自宅勤務)を要請し、交通量を減らすことで車両由来の排ガスを抑制するよう訴えた。
バンコク都環境局などの測定によれば、同日朝の時点で都内の多くの観測地点でPM2.5濃度が基準値を超え、35区以上が健康影響が出始める「オレンジ」ゾーンに達した。
知事は全50区の区役所に対し、建設現場や工場の粉じん・排ガス対策、黒煙を出すトラックやバスの走行管理を徹底するよう改めて指示。違反があれば現場を一時停止させることも辞さず、改善命令や車両の使用禁止などの措置を講じる方針を示す。あわせて、こうした点検や指導の状況を継続的に広報し、市民が目に見える形で対策を実感できるよう求めた。
同時に、年末の高潮期での海水逆流への対応も抜かりなく進めるよう命じた。知事は、河川堤防の外側に住む住民の安全確保を最優先とし、土のうの積み方や簡易木橋の強度、護岸の「欠け」部分などを再点検するよう区長に指示。特にチャオプラヤー川沿いの低地では、満潮時に護岸を越える逆流が発生しやすく、高潮と豪雨が重なれば住宅や商店街への浸水リスクが高まるためである。
バンコクでは毎年、乾季の到来とともにPM2.5が基準値を上回る日が続く。排ガスや建設工事に加え、周辺県での野焼きや近隣国からの越境汚染も要因となる。PM2.5被害は、市民生活の質だけでなく、観光業にも影響する。バンコク都の動きは、出社前提の働き方を見直すきっかけにもなりうる一方、在宅勤務が難しい中小企業や現場労働者への配慮も求められる。
